決算公告の目的と手続き方法|義務づけられている会社の範囲と罰則について
株式会社には、決算公告する義務があります。記載事項や決算公告の方法が定められているため、決算公告を実施しなければ罰則の対象になります。
この記事では、会社の経営層に向けて、決算公告の概要や目的、義務化される会社の範囲などを解説します。
また、この記事の後半部分では、決算公告の手続きの方法を解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
決算公告とは
決算公告とは官報や日刊新聞紙などの公の場で、株式会社の決算内容を掲載することです。決算公告は株式会社に義務づけられていますが、合同会社や合資会社などは決算公告する必要はありません。
決算公告の時期は、株式会社が前年度の決算内容について、株主総会の承認を得たあとです。
(出典:会社法 第440条)
目的
決算公告をする目的は、会社の財務状況を株主や取引先などに知らせ、会社の安全性を示すことです。会社の財務状況の安定性がわかれば、株主は長い間株を保有したり、取引先は今後も取引をしてくれたりする可能性が高まるでしょう。
記載内容
決算公告の記載内容は大会社か大会社以外かで異なります。会社法で定義付けられている大会社とは、資本金が5億円以上もしくは、負債の合計額が200億円以上の会社のことです
- 大会社:貸借対照表と損益計算書
- 大会社以外:貸借対照表のみ
会社によって公告内容に違いがあり、大会社は財産の状態を明確にするため、非公開会社よりも詳細な情報が必要です。
例えば、官報や日刊新聞で公告する際は全文の要約を掲載する方法が一般的ですが、電子公告で公告する際は、全文を掲載しなければなりません。
(出典:会社法 第440条)
実施時期
法律上、決算公告の具体的な期限は設けられていませんが、定時株主総会が終わり次第、決算公告は可能な限り速やかに実施しましょう。
企業に正当性か合理性のある場合、実施期間が数日程度遅れてもよいですが、定時株主総会が終結してから4〜5日以内に実施するとよいです。
(出典:会社法第440条第1項)
決算公告が義務になる会社の範囲
決算公告が義務になる会社の範囲をまとめました。
決算公告が必要な会社
会社の規模に応じて公告内容に違いがありますが、決算公告が必要な会社はすべての株式会社です。会社法によって、株式会社の公告が義務付けられているためです。
決算公告には財務状況の他にも、合併などの情報を記載し、企業の安全性を関係者に示します。
決算公告が不要な会社
決算公告が不要な会社は、株式会社以外の法人です。ただし、個別の法律によって「決算公告」が義務づけられている場合は、その規定に従って決算書類を公告しなければなりません。
例えば、次の3つの法人は、貸借対照表を公告しなければなりません。大規模法人の場合は、貸借対照表及び損益計算書を公告する必要があります。
- 一般社団法人・財団法人
- 公益社団法人
- 財団法人
決算公告の手続き方法は3種類
決算公告の手続き方法は3種類です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.官報
官報(かんぽう)とは、政府が法律や政令や告示、命令などの公的な情報や、公告を広く国民に知らせるために発行する公式の報道機関です。日本の広報誌のような存在で掲載料金の安さがポイントです。
決算公告で記載する内容は、貸借対照表と損益計算書(大会社以外は貸借対照表)の概要です。
(出典:会社法 第440条)
2.日刊新聞紙
日刊新聞紙とは、新聞社が朝や夕方に毎日発行する新聞紙です。官報よりも多くの読者がいるため、会社のPRや会社の透明性をアピールするのに向いているでしょう。
掲載する分量によって料金が異なりますが、最低でも50万円前後の金額を用意しなければなりません。
官報と同様に、決算公告で記載する内容は、貸借対照表と損益計算書(大会社以外は貸借対照表)の概要です。
3.電子公告
電子公告では、自社のホームページや外部のWebサイトに決算公告の情報を掲載します。しかし、電子公告はWebサイトに5年分の貸借対照表と損益計算書(大会社以外は貸借対照表)の全文を載せ続けなければなりません。
また、自社のホームページを利用すればコストをかけなくてよいですが、外部のWebサイトに掲載すると掲載料が発生します。
決算公告を変更する際の手続き方法
決算公告を変更するには、定款に記載している「公告の方法」を変更しなければなりません。具体的には、株主総会で「定款変更(公告の方法)」の議案を決議してもらうことになります。
この決議が可決されたら、法務局で「法人の公告方法」の変更登記を行います。登記は、基本的に変更の決議後2週間以内です。
決算公告を実施しなかった場合の罰則
決算公告を行わなかった場合もしくは、不正の公告を行った場合には会社法により100万円以下の過料が課されます。
株式会社は正しい流れに沿いながら、正確に決算公告を行いましょう。
(出典:会社法第976条第2号)
決算公告についてのまとめ
一般的には、すべての株式会社に決算公告が義務づけられており、決算公告をしなければ罰則の対象になります。
会社の今後を考えるうえでも、毎年の決算情報は非常に重要な指標です。この記事の内容を参考にしながら、自社に適切な方法で決算公告を実施しましょう。
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