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コーピングとは? 従業員がストレスを溜めないために企業がすべきこと

監修者: キャリアコンサルタント / 外国人雇用管理士®  木村 千恵子

コーピングとは? 従業員がストレスを溜めないために企業がすべきこと

コーピングとは、メンタルヘルスの分野では、「ストレスに対処する」という意味で使われる言葉です。特に、特定のストレスの多い問題や状況に対する対処方法を「ストレスコーピング」と呼びます。

今回は、コーピングの種類や企業が実践するべきコーピングについてわかりやすく解説します。従業員がストレスを溜めないために重要となりますので、ぜひ参考にしてください。


コーピングとは?

コーピングとは、「うまく処理する」「なんとかうまくやっていく」などの意味を持つ英語のcopeが語源の言葉です。メンタルヘルスの分野では、「ストレスに対処する」という意味で使われます。厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、特定のストレスの多い問題や状況に対する対処方法を「ストレスコーピング」と呼びます。

参考:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳|厚生労働省


コーピングの種類

ここからは、コーピングを種類別に分けて紹介します。

問題焦点型

問題焦点型には、「問題焦点型コーピング」と「社会的支援探索コーピング」の2種類があります。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングとは、ストレッサー(ストレスを引き起こしている問題)を解決することを目的としたコーピングの行動を指します。

たとえば、社内の同僚と仕事の方針などに異なる考え方でぶつかって、ギスギスした関係になった時、関係を改善しようと自ら謝罪して歩み寄る行動が該当します。良好な関係を取り戻そうと努力する行動は、悪化した同僚との関係を直接解決するための問題焦点型コーピングです。

社会的支援探索コーピング

社会的支援探索型コーピングとは、ストレッサーに直面した時に周囲に支援や助言を求めて対処しようとするコーピングの行動です。

問題焦点型コーピングの一つと言うこともでき、問題に対して上司や同僚、家族、友人、知人、医師や看護師などのサポートを得て、問題解決を図ろうとします。社会的支援探索型コーピングは、ストレスの軽減が直接期待できるだけでなく、他のコーピング行動の効果を促進する効果も期待できます。

情動焦点型

情報焦点型には、「情報処理型コーピング」と「認知的再評価型コーピング」の2種類があります。

情報処理型コーピング

情動焦点型コーピングとは、ストレッサーによる怒りや不安な感情をコントロールして、情緒不安定な状態を低減するためのコーピングです。

たとえば、先に述べた問題焦点型コーピングの例の場合、同僚との関係を直接解決しようとする代わりに、同僚との不仲によるイライラを忘れるために飲酒やギャンブルに没頭する行動が当てはまります。また、イライラを落ち着かせるためのリラクゼーションも情動焦点型コーピングの行動です。

認知的再評価型コーピング

認知的再評価型コーピングとは、ストレッサーによって引き起こされた問題に対して、あえてその刺激をストレスと認知しないコーピング方法です。認知的再評価型コーピングでは、直面している問題やストレスに対する捉え方や見方を変えることによって、これまでとは異なる方法で対処しようとします。

たとえば、新しい仕事に対する失敗の不安ストレスを、「新しい経験をただ楽しめばよい」と捉え直すことでストレスの程度を軽減する行動です。

ストレス解消型

ストレス解消型には、「リラクゼーション型コーピング」と「気晴らし型コーピング」の2種類があります。

リラクゼーション型コーピング

リラクゼーション型コーピングは、一般的なストレス対処法として最もよく知られたコーピング方法です。

たとえば、ヨガや座禅、ストレッチ、瞑想、アロマセラピーなどは代表的なリラクゼーション型コーピングの行動です。さらに、リラクゼーション技法としては自立訓練法や漸進的筋弛緩法などがあり、自律神経系の交感神経系と副交感神経栄のバランスを整えるコーピング行動になります。

気晴らし型コーピング

気晴らし型コーピングとは、趣味やスポーツ、旅行や買い物を楽しむなどの文字どおりの気晴らし、気分転換を目的とした行動を取ることにより、ストレッサーによって引き起こされた問題のことから注意をそらすコーピング行動です。

気晴らし型コーピングは、好きなことを思い切り楽しむことで気分転換を図るコーピング行動であるため、行動の種類によっては繰り返し行うとコーピングの効果が薄れていく場合がある点には注意が必要です。


企業が実践できるコーピング

ここからは、企業が社員に対して実践できるコーピングを紹介します。

メンター制度

相談者であるメンティーが、どのようなことでも相談できる信頼している人をメンターと呼びます。メンター制度とは、組織の中でお互いの信頼関係に基づいた対話を通してメンターがメンティーの成長を支援し、組織の生産性向上を図る仕組みです。

一般的には、先輩社員や上司がメンターとなってメンティーの相談相手になり、メンタルの状態を良好に保ちながら、仕事上の課題や悩みをメンティー自身が前向きに考え行動できるように継続的に支援します。メンター制度により、企業は社員が一人でストレスを抱え込む状況に陥らないようにサポートすることができます。

1on1制度

1on1制度とは、上司と部下が一対一で30分〜1時間程度のミーティングを定期的かつ継続的に行うことで、部下の成長を促すための仕組みです。

1on1は単なる業務報告や仕事の進捗確認のためのミーティングではありません。その特徴は、部下の経験学習のサイクルを効果的に回すことを上司が支援する対話にあります。したがって、部下の悩みや課題に関して、上司は自分の考えややり方を押し付けたり、部下の考えを否定してはいけません。部下の気持ちに寄り添い、心理的安全性を担保した環境を整えることが求められます。

カウンセリング

組織内で実施できるコーピングの手段の一つに、メンタルヘルス専門のカウンセリング窓口の設置があります。カウンセリングは、適切なカウンセリング技法を実践できる心理カウンセラーが行うことが適切です。社内に適任者がいない場合は外部の専門機関と提携するなど、心理カウンセリングの専門家につなげられる窓口を設置する必要があります。

諸事情で専門家との提携や契約による常時設置が難しい場合は、メンターとなる社員や人事部の担当者などが専門の研修を受けて、初期対応のカウンセリング窓口となることが考えられます。

社内研修

コーピングの実践方法について理解して学んだものの、実際にはコーピング行動の実践が難しいという組織もあるかも知れません。その場合、社内でメンタルヘルス研修の実施を検討することをお勧めします。

メンタルヘルス研修はさまざまなテーマで実施できますが、最初に全社員がセルフケア研修を受講し、その後管理職クラスの人にはラインケア研修を実施するとよいでしょう。コーピングを日常的に実践できるようにするためには、研修を1回受けただけで終わりにしないことが大切です。同じ内容でも定期的に繰り返し受講することで、実践の頻度も向上するでしょう。

職場環境の改善

ストレスに対するコーピングの行動を効果的に実践するうえでは、職場の物理的な環境にも工夫が必要です。たとえば、物が雑然と置かれていて整理整頓されていないオフィスでは、人は集中して仕事に取り組むことはできません。仕事に集中して取り組むためには、心身ともにリラックスできる環境も作ることが大切です。

瞑想室やソファを設ける、社員が一緒に一つのことに取り組めるようなオフィス家具の配置を改めて検討するなど、物理的なオフィスの間取りを見直すことも、企業ができるストレスコーピングの取り組みの一つになります。


コーピングについてのまとめ

コーピングとは、メンタルヘルスの分野では「ストレスに対処する」という意味で使われます。コーピングには、問題焦点型と情動焦点型、ストレス解消型があり、それぞれ行動やストレスに対する向き合い方が異なります。

従業員がストレスを溜めないようにするためには、企業が積極的にコーピングを実践することも重要です。職場環境の改善や社内研修の実施など、できることから始めてみてはいかがでしょうか。


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監修者プロフィール

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木村 千恵子

キャリアコンサルタント / 外国人雇用管理士®

2度のアメリカ留学経験をはさみ、20年以上外資系IT企業を渡り歩きグローバルプロジェクトに従事したのち、2016年にキャリアコンサルタントとして活動を開始。

現在は中小企業の従業員のキャリア、メンタルヘルス、テレワークに関する課題解決支援、外国人留学生の就職支援、個人向けキャリアセミナーなどを中心に活動中。

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