育児時間とは? 時短勤務との違いや使い方、対象者や給料の考え方を学ぼう
育児時間は、仕事と育児のバランスをよくするための重要な制度で、労働基準法によって定められています。人事部の担当者は従業員から育児時間の申請を受けた際、スムーズに手続きできるようにしておきましょう。
この記事では、企業の人事部に向けて、育児時間の概要と基本的な考え方、計算方法を解説します。
また、この記事の後半部分では、育児時間の注意点をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
育児時間とは
育児時間は、1歳未満の実子か養子を持つ母親が、休憩時間とは別に育児のために取得できる時間のことです。
労働時間が4時間以下なら1日30分で、それ以上なら2回で合計1時間を取得できます。企業は、育児時間中の女性従業員を勤務させられません。
一方で、3歳未満の子を持つ母親には、時短勤務の措置がとられています。下記で時短勤務との違いや、育児時間の使い方について解説します。
(出典:労働基準法 第67条)
時短勤務との違い
時短勤務とは、1日の所定労働時間を短縮する制度です。育児と仕事の両立を支援するため、3歳未満の子を持つ従業員について時短勤務やフレックスタイムなどの制度を設けることが企業に義務付けられています。
育児時間と時短勤務の違いについて、下記の表にまとめました。
|
育児時間 |
育児時短勤務 |
---|---|---|
子どもの対象年齢 |
1歳未満 |
3歳未満 |
対象者 |
女性(原則) |
女性・男性 |
労働時間の措置 |
休憩を増やす |
労働時間を減らす |
制度 |
労働基準法 |
育児・介護休業法 |
一般的には、時短勤務を利用した場合、短縮した時間分の基本給などは減額されます。
ただし、日雇いや1週間の所定労働日数が2日以下の従業員などは時短勤務を取得できない可能性がありますので、勤め先の就業規則を確認しましょう。
なお、後述しますがこの2つは制度が異なるため、時短勤務と育児時間の併用は可能です。
(出典:厚生労働省 時短勤務の制度)
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育児時間の使い方
育児時間について説明してきましたが、ここでは具体的な育児時間の使い方を紹介します。以下の主なケースについて、それぞれ説明します。
- 子どもの通院が必要な場合
- 早めに仕事を終えて、保育園の子どもを迎えに行く
子どもの通院が必要な場合
子どもの乳児検診や体調不良の時など一時的な通院が必要な際に、育児時間を取得し通院してから出勤する、というような使い方が可能です。
早めに仕事を終えて、保育園の子どもを迎えに行く
保育園の都合によっては、1歳未満の子どもの預かり時間が短く、時間を延長できない場合があります。そのような際に、就業時間より早めに仕事を終えてから子どものお迎えに行けます。
育児時間の基本的な考え方
次の項目に沿って、育児時間の概要を解説します。
- 対象者
- 取得回数と時間帯
- 給料
対象者
育児時間を取得できる人は、1歳未満の実子か養子を育てる従業員です。法律上、対象となるのは女性従業員だけですが、男性従業員に育児時間の取得を認める企業もあります。
勤め先の就業規則で、取得できる対象者をチェックしておきましょう。企業は、育児時間を使いたいという申し出を拒否できません。
(出典:労働基準法 第67条)
取得回数・時間帯
1日につき、30分の育児時間を2回取得できますが、1回で1時間など柔軟に対応できます。
出退勤の前後30分や、始業後の1時間に育児時間を取得することも可能です。子どもの急な体調変化などに柔軟に対応できます。
なお、取得する時間帯は、原則従業員が自由に決められます。
(出典:労働基準法 第67条)
給料
育児時間中の給与に関する法律はありませんので、給与は労使の間で話し合いで決められます。
就業規則がない場合、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて給与の支払いは不要です。
しかし、従業員とのトラブルを避けるためにも、育児時間中の給与の取り決めは、事前に就業規則や給与規程で明確にしましょう。
(出典:労働契約法 第6条)
取得できる育児時間の計算方法
1日の所定労働時間によって育児時間が決められ、休憩時間とは別に育児のための休憩が取れます。
- 8時間勤務:30分を2回もしくは1時間を1回
- 4時間勤務:30分を1回
変形労働時間制の従業員も、上記と同様の育児時間の取得が可能です。
なお、子どもを保育園などに送迎するための移動時間は育児時間に含まれます。保育園が会社から遠い場合、移動時間に育児時間の多くを費やしてしまうため、時間を延長するなど柔軟な対応が望ましいとされています。
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育児時間における注意点
育児時間における注意点を紹介します。
- 申請は拒否できない
- 時短勤務と併用できる
- 就業規則への記載を怠らない
それぞれ解説します。
申請は拒否できない
もし、対象の従業員から申請があった場合、企業は従業員からの育児時間請求を拒否してはいけません。
育児時間の取得は、労働基準法で認められており、取得要件を満たした従業員の権利です。従業員が請求した時間帯に育児時間を付与しなければ、企業は労働基準法違反になります。
時短勤務と併用できる
時短勤務している従業員は、仕事と育児の両立で時間に余裕がないため、育児時間と時短勤務を併用するとよいでしょう。
例えば、時短勤務制度を利用して10時から17時まで勤務(休憩1時間、所定労働時間6時間)する従業員は、休憩時間を除く10時から17時までの間に、最大1時間の育児時間を取得できます。
就業規則への記載を怠らない
育児時間が取得できることと、育児時間に対する賃金を就業規則に記載しましょう。特に育児時間における賃金は、有給なのかどうか記載するのがポイントです。
「ノーワーク・ノーペイの原則」より、育児時間中は無給でも問題ありませんが、労働時間や給与に関する規定は、就業規則に記載するのが原則です。
従業員が安心して育児時間を取得でき、賃金に関するトラブル防止にも役立ちます。
育児時間のまとめ
労働基準法では、1歳未満の子を育てる女性従業員に対して、勤務時間に応じた育児時間の取得を認めています。
原則として育児時間中は賃金が支給されませんが、企業によって対応が異なるため事前に確認しましょう。
また、男性従業員による育児時間の取得を認める企業もあります。企業はルールを明確にし柔軟性を持たせることで、子どもを育てる従業員にとって働きやすい環境を整えられるでしょう。