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タイムカードがない会社は違法? 勤怠管理のプロが解説する適切な労働時間管理

タイムカードがない会社は違法? 勤怠管理のプロが解説する適切な労働時間管理

近年、勤怠管理においてもデジタル化がすすめられています。一方、現在タイムカードで管理していない会社は違法になるのか、疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

本記事では、タイムカードの有無と法的義務の関係、適切な労働時間管理の方法、そして勤怠管理システムの活用について詳しく解説します。

勤怠管理のプロの視点から、企業が取り組むべき適切な勤怠管理のポイントをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。


この記事の監修者
西岡社会保険労務士事務所  代表 

タイムカードがない会社は違法なのか?

タイムカードの有無が法に影響するのかについて知るためには、まず労働時間管理に関する法的義務を理解する必要があります。

ここでは、労働時間管理の法的義務やタイムカードの有無と法的義務の関係、そして厚生労働省のガイドラインが示す適切な労働時間管理について解説します。

労働時間管理の法的義務

労働安全衛生法により、使用者は労働者の労働時間を把握する義務があります。この義務は従業員の健康管理や過重労働防止のために設けられており、違反すると罰則の対象となる可能性があるのです。

具体的には、労働安全衛生法第66条の8の3において、「事業者は厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」と規定されています。

この法的義務を遵守することで、会社は従業員の健康と安全の確保、そして法的リスクの回避を同時に実現できるでしょう。

タイムカードの有無と法的義務の関係

タイムカードの有無は、違法性を決定する要因ではありません。重要なのは客観的な労働時間管理の実施であり、タイムカード以外の方法でも法的要件を満たすことが可能です。

例えば、ICカードを使用した入退室管理システム、パソコンのログイン・ログアウト記録、勤怠管理アプリなどが代替手段として挙げられます。

会社は自社の状況に合わせて、最も効果的な労働時間管理の方法を選択し、実施することが求められます。選択した方法により客観的で正確な記録ができ、従業員の実際の労働時間を適切に反映していることが重要です。

厚生労働省のガイドラインが示す適切な労働時間管理

厚労省ガイドラインは、客観的な記録に基づく労働時間管理を「使用者が講ずべき措置」として明確化しています。

労働時間の把握方法として、使用者の現認または客観的な記録を基礎とした確認を原則的な方法として挙げています。

具体的には、タイムカードやICカード、PCログなどの記録による労働時間の管理です。これらの方法は、労働時間を正確に把握し、不正や誤りを防ぐ上で効果的です。

一方で、これらの方法を使用できない場合の対応として、自己申告制による労働時間管理についても言及されています。

自己申告制の場合は、使用者による実態調査などにより申告された労働時間が正確かどうかを確認し、必要に応じて補正する必要があります。


タイムカードがない会社の勤怠管理方法

先述したとおり、タイムカードを使用しない会社でも、適切な勤怠管理を行うことは可能です。

ここでは、タイムカードに代わる勤怠管理として、以下の3つの方法について紹介します。

  • 自己申告制
  • ICカードやパソコンログによる管理
  • 勤怠管理システムの活用

これらの方法を理解し、自社の状況に最適な勤怠管理方法を選択することで、適切な労働時間の把握と管理が可能になります。

自己申告制による勤怠管理

タイムカードがない会社の勤怠管理方法の一つとして、自己申告制が挙げられます。自己申告制は、初期コストを抑えて手軽に始めることができますが、厳格な運用ルールと従業員教育が必要です。

この方法には不正や誤記のリスクが伴うため、定期的な実態調査や上司による確認など、補完的な措置が必要です。

適切な運用のために、具体的には、労働者への十分な説明、実態調査の実施、申告しやすい環境づくり、上司による確認などの措置を講じます。

ICカードやパソコンログによる管理

ICカードやパソコンログによる勤怠管理は、客観的な労働時間を把握する有効な手段です。入退室時間やPC使用時間を機械で正確に記録できるため、労働時間の把握方法として信頼性が高いです。

ICカードによる管理の利点としては、入退室時間の正確な記録、なりすましや代理打刻の防止、データ改ざんの困難さなどがあります。

また、打刻の際に特別な操作が不要なことや、導入時に従業員に浸透しやすいメリットもあります。

一方、パソコンログによる管理は、実際の作業時間の把握、テレワーク時の労働時間管理、業務内容の可視化などに有効です。

これらの方法を組み合わせて管理することで、信頼性の高い労働時間管理が可能になります。例えば、パソコンログと従業員の勤怠報告を照らし合わせれば、より正確に勤怠時間が把握できるでしょう。

勤怠管理システムの活用

勤怠管理システムは、効率的かつ正確な勤怠管理を実現するために有効なツールです。主に以下のような機能を持ちます。

  • 出社と退社の打刻
  • 打刻忘れの防止
  • 残業時間の自動計算
  • 有給休暇管理
  • リアルタイムでの労働時間把握
  • 各種レポートの自動生成

これらの機能により、人事労務担当者の業務効率が向上し、ミスのリスクも軽減するでしょう。

また、従業員本人が、容易に労働時間や有給休暇の取得状況を確認できるため、ワークライフバランスの向上にも寄与します。

ただし、システムの導入には初期コストがかかるため、会社の規模や業務内容に応じて適切なシステムを選択することが重要です。


タイムカードと勤怠管理システムの比較

自己申告制の企業が労働時間の把握方法の改善を図るには、どのような管理方法があるのでしょうか。

ここでは、タイムカードと勤怠管理システムについて紹介します。それぞれのメリットとデメリットを比較した上で、自社の会社規模や業務内容に応じて最適な選択をしていきましょう。

タイムカードのメリットとデメリット

タイムカードのメリットとデメリットについては、以下の点が挙げられます。

メリット

デメリット

  • 導入コストが低い
  • ランニングコストが低い
  • 操作が簡単なため誰もが使いやすい
  • 代理打刻や改ざんのリスクがある
  • 集計作業に時間がかかる
  • リアルタイムでの労働時間把握が難しい
  • 複雑な勤務体系への対応が困難である

タイムカードのメリットは、安価な導入コストだけでなく、ランニングコストもタイムカード代やインク交換用のカートリッジ代だけで済む点です。

また、打刻はタイムレコードにタイムカードを差し込むだけのため、小規模の会社でもすぐに運用できるでしょう。

一方、デメリットとしては、本人以外でも打刻が可能となるため、不正打刻のリスクがあります。

そのため、従業員数が多い会社や複数の拠点がある場合、タイムカードによる管理は不正防止の業務負担が大きくなる可能性があります。

勤怠管理システムのメリットとデメリット

一方、勤怠管理システムのメリットとデメリットについては、以下のとおりです。

メリット

デメリット

  • 正確な労働時間の記録と管理が可能である
  • リアルタイムでの労働時間把握ができる
  • 複雑な勤務体系にも対応可能である
  • 各種レポートの自動生成ができる
  • 導入時のコストがかかる
  • 従業員の操作研修が必要である
  • システムトラブル時の対応が必要である

勤怠管理システムは、正確性と効率性が高いですが、初期投資が必要です。

メリットは、正確な集計や自動計算ができ、外出先での打刻が可能な点などが挙げられます。デメリットは、導入時のコストや導入作業の負荷が高いことや、事前に準備や研修の必要がある点です。

そのため小規模の会社ではタイムカードによる勤怠管理、大規模な会社や複雑な勤務体系がある場合、勤怠管理システムによる勤怠管理が適している場合が多いです。


タイムカードがない会社での残業管理

タイムカードがない会社でも、残業管理を適切に行うことが必要です。

ここでは、タイムカードがない場合の残業時間の記録方法とみなし残業制度の注意点について解説します。

正確な残業時間の把握と適切な残業代の支払いは、労働基準法遵守の観点からも重要です。これらの知識を得ることで、タイムカードがない環境下でも適切な残業管理を実施することができるでしょう。

残業時間の記録方法

残業時間は、1分単位で正確に記録し、管理する必要があります。端数を切り捨てることは、労働基準法違反となる可能性があるため、正確な記録と適切な残業代の支払いを行いましょう。

例えば、タイムカードがない場合、PCログやスマートフォンアプリなどを活用して残業時間を記録できます。

また、管理職による確認や従業員からの自己申告などの方法を組み合わせることで、より正確な残業時間の把握が可能です。

不適切な残業管理は、労働基準監督署の指導対象となり、罰則のリスクがあります。また、会社のイメージ低下や人材確保の困難さにもつながる可能性があるため、残業時間の管理は慎重に行いましょう。

みなし残業制度と注意点

みなし残業制度を導入する場合は、実際の残業時間との乖離に注意しなければなりません。

この制度は、あらかじめ定めた時間分の残業代を基本給に加えて支払う方法であるため、実際の残業時間がみなし残業時間を超える場合は追加の残業代を支払う必要があります。

みなし残業時間を超える残業が常態化している場合、追加の残業代支払いやみなし残業時間の見直しが必要になります。

また、みなし残業制度の導入には労使協定の締結が必須であり、事前に従業員の同意を得ることが重要です。制度内容を正しく理解して、残業代の未払いを防止しましょう。


会社が取り組むべき適切な勤怠管理

会社が適切な勤怠管理をすることによって、法令やコンプライアンスを遵守できるだけでなく、従業員の健康を守ることができます。

ここでは、以下の勤怠における適切な管理方法について解説していきます。

  • 労働時間の正確な把握と記録
  • 従業員への適切な説明と教育
  • 定期的な勤怠管理方法の見直し

これらの方法を取り入れ、法令遵守と従業員満足度の向上を同時に実現しましょう。

労働時間の正確な把握と記録

会社は客観的な方法で労働時間を把握し、適切に記録を保管しなければなりません。

一般的に労働時間の記録は5年間(経過措置として当分の間は3年)の保存が義務付けられており、労働基準監督署の調査時にもすぐに提示できるような管理を行う必要があります。

例えば、正確な労働時間の把握には、ICカードやPCログなどの客観的な記録手段を活用することが効果的でしょう。

また、勤怠記録を適切に管理するための勤怠管理システムを導入することで、テレワークなど多様な働き方に対応した一元管理や集計作業の削減など、業務の大幅な効率化が望めます。

ほかにも、正確な労働時間の把握と記録は、適切な残業代の支払いや長時間労働の防止にもつながり、労使双方にとってメリットがあります。

従業員への適切な説明と教育

会社は、従業員に向けて、勤怠管理の重要性と正しい記録方法を周知徹底すべきです。

例えば、研修や説明会を実施し、勤怠管理の目的や適切な労働時間管理の重要性について理解を深めます。特に、新入社員や中途入社の従業員に対しては、入社時に勤怠管理システムの使用方法や会社の方針について詳しく説明する必要があります。

また、管理職に対して、部下の労働時間管理や残業指示の方法についての教育も重要です。管理職を含めた従業員全体の意識向上が、より正確で効果的な勤怠管理につながるでしょう。

定期的な勤怠管理方法の見直し

会社は、法改正や社内状況の変化に応じて、勤怠管理方法を定期的に見直す必要があります。近年施行された働き方改革関連法や新しい勤務形態の導入に合わせて、システムのアップデートや運用方法の改善を行っていくことが重要です。

また、従業員からのフィードバックを積極的に収集し、日々使いやすさや正確性の向上に努めることも大切です。定期的な見直しと日々の改善によって、自社に適したより効率的で正確な勤怠管理が可能になります。

社会や技術の変化に柔軟に対応できる勤怠管理体制を段階的に構築していくことが、勤怠管理の効率化につながります。


適切な勤怠管理で働きやすい職場環境を作ろう

タイムカードがなくても、適切な勤怠管理は可能です。そのためにまず、労働時間管理における法令について理解しておきましょう。その上で、タイムカードの有無にかかわらず自社に適した勤怠管理を選択してください。

また、適切な勤怠管理を行うためには、客観的で正確な労働時間の把握と記録、従業員への適切な説明と教育、定期的な見直しが重要です。

適切な勤怠管理によって過重労働を防止し人員配置を適正化して、従業員の健康維持やワークライフバランスの向上を図りましょう。

従業員が働きやすい環境ができれば、会社の生産性も期待できます。


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監修者プロフィール

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西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所 代表

生命保険会社に25年勤務し、FPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。
2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
得意分野は、人事・労務、金融全般、生命保険、公的年金など。

【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士

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