覚書における収入印紙の扱い|必要・不要なケースや注意点を解説
覚書とは契約の前後に当事者同士で決めた事柄を記録しておくものです。
契約書には契約の全容が記載されていますが、契約書を取り交わす前に「価格のみ」や「期限のみ」など一部の内容だけを先に決めた場合や、契約後に変更があった場合などに覚書を作成します。
覚書は一般的に契約書よりも簡素な内容になりますが、法的効力を持った文書ですので、内容によっては収入印紙が必要です。
ただし、タイトルが覚書であったとしても、その内容によって収入印紙の添付の必要性の有無や金額の判断はなされるため、注意が必要です。
覚書に収入印紙は必要か
覚書に収入印紙が必要なケースと、不要なケースをそれぞれ見ていきましょう。
必要なケースでは、収入印紙を貼らなければ脱税になってしまうため、覚書を扱う上では充分に注意してください。
必要なケース
覚書に収入印紙が必要になるのは以下の両方に該当するケースです。
- 記載された契約金額が1万円以上の場合
- 印紙税法における課税文書に該当する場合
覚書に記載された契約金額が1万円以上の場合は、金額に応じた額の収入印紙を貼り付けなければなりません。
また、印紙税法における課税文書のうちのどれかに該当する場合も、収入印紙の貼り付けが必要です。
課税文書は第1号文書から第20号文書まで全20種類が規定されています。代表的なものを以下に紹介します。
- 第1号文書...以下のいずれかに該当する契約書
・不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
・地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
・消費貸借に関する契約書
・運送に関する契約書(傭よう船契約書を含む)
- 第2号文書...請負に関する契約書
不要なケース
覚書に収入印紙を貼り付ける必要がないのは以下のいずれかに該当するケースです。
- 記載された契約金額が1万円未満の場合
- 電子契約の場合
記載された契約金額が1万円未満の文書は非課税文書に該当するため、内容に関わらず収入印紙を貼り付ける必要はありません。
また、電子契約の場合も、内容に関わらず収入印紙の貼り付けが不要です。
これは印紙税法が規定するところの「課税文書の作成」に当たらないためです。
印紙税法第2条には「文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」と記載されていますが、印紙税法基本通達第44条には「法に規定する課税文書の『作成』とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」と書かれています。
つまり紙に書く必要のない電子契約は「用紙等に課税事項を記載」したものではないため、文書の作成に該当しないのです。
覚書に貼付する収入印紙の金額
続いて、覚書に貼り付ける収入印紙の金額を見ていきましょう。
ここでは全20種類の課税文書のうち、第1号文書と第2号文書の金額金額についてそれぞれ紹介します。
第1号文書の場合
第1号文書は前述のとおり、不動産や土地などを売買する際に交わされる文書です。
必要な収入印紙の金額は以下のとおりです。
記載された契約金額 |
収入印紙の金額 |
---|---|
1万円未満 |
非課税 |
1万1円~10万円 |
200円 |
10万1円~50万円 |
400円 |
50万1円~100万円 |
1,000円 |
100万1円~500万円 |
2,000円 |
500万1円~1,000万円 |
1万円 |
1,000万1円~5,000万円 |
2万円 |
5,000万1円~1億円 |
6万円 |
1億1円~5億円 |
10万円 |
5億1円~10億円 |
20万円 |
10億1円~50億円 |
40万円 |
50億1円以上 |
60万円 |
契約金額の記載なし |
200円 |
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
第2号文書の場合
請負に関する文書は第2合分書にあたります。必要な収入印紙の金額は以下のとおりです。
記載された契約金額 |
収入印紙の金額 |
---|---|
1万円未満 |
非課税 |
1万1円~100万円 |
200円 |
100万1円~200万円 |
400円 |
200万1円~300万円 |
1,000円 |
300万1円~500万円 |
2,000円 |
500万1円~1,000万円 |
1万円 |
1,000万1円~5,000万円 |
2万円 |
5,000万1円~1億円 |
6万円 |
1億1円~5億円 |
10万円 |
5億1円~10億円 |
20万円 |
10億1円~50億円 |
40万円 |
50億1円以上 |
60万円 |
契約金額の記載なし |
200円 |
覚書に収入印紙を貼付するときの注意点
覚書に収入印紙を貼り付ける際には以下の事柄に注意してください。
- 収入印紙の費用負担
- 貼り忘れは脱税扱い
それぞれ見ていきましょう。
収入印紙の費用負担
収入印紙の費用は契約を双方で負担します。
課税文章を2人以上が共同して作成した場合、納税義務は作成にかかわった全員に課せられることが、印紙税法3条によって定められています。
しかし、負担の割合については規定されていないため、当事者間の同意のもとで自由に決めることができます。通常は、折半する場合が多いでしょう。
ただし、官公庁は印紙税の課税対象ではありません。
そのため、民間と官公庁とのあいだで作成された文書のうち、民間側が作成したものについては、収入印紙の費用を全て民間が負担する必要があります。官公庁側が作成した場合は非課税です。
貼り忘れは脱税扱い
覚書に収入印紙を貼り忘れた場合、脱税と見做されます。
この場合、収入印紙の購入によって納税するはずだった印紙税に加えて、その2倍の金額に相当する過怠税が課せられ、合計で3倍の金額を徴収されることになります。
ただし、自ら貼り忘れを申し出た場合は、過怠税は印紙税の10%となり、合計の徴収額は1.1倍となります。
内容によっては覚書にも印紙が必要
覚書に収入印紙の貼り付けが必要なケースと、その金額、注意点について解説しました。
覚書は契約書を補助として用いられることが一般的ですが、条件を満たす者は課税文書にあたるため、収入印紙を忘れれば脱税とみなされます。
また、内容が同じでも電子契約であれば非課税になるため、覚書を取り扱う場合には覚えておきましょう。
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