請書に印紙が必要・不要なケースとは? 金額・貼り方・消印の押し方の基礎知識
請負契約において、受注者がその内容を承諾した旨を記載した書類を「請書(注文請書)」と言います。
この請書には「印紙税」が課され、支払いのために「印紙(収入印紙)」を貼らなくてはなりません。
しかし、必要な印紙の金額は請書に記載された契約金額によって異なります。
また、契約金額の記載がない・明確に示されていない場合でも印紙が必要になるケースもあるのです。
初めて請書や印紙を扱う人向けに、請書に関する基礎知識をまとめて解説します。
請書に印紙が必要なケースとその理由
請書にもさまざまな種類があります。なかでも印紙が必要となるのは、以下を始めとした請負契約に関連するものです。
- 工事請負契約書・工事注文請書
- 物品加工注文請書
- 広告契約書
- 会計監査契約書
※いずれも、書面に記載された契約金額が1万円以上の場合
上記の請書に印紙が必要な理由は、請書が「課税文書」に該当するためです。
請書や領収書といった書類は、書面に書かれた経済的な取引が実際に行われたことを証明するものです。印紙税法では、こうした書類に「印紙税」という税金を課すと定めています。
そして、印紙税の対象となる文書を「課税文書」と呼ぶのです。
ただし、金額の記載がなくても、課税文書とみなされる場合もあります。
たとえば、当該契約が継続的取引に該当する場合、営業者間において継続する複数の取引の基本的な取引条件を定めるものは、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」とされ、記載金額がなくても課税文書になります。
また、契約書のタイトルが上記以外であったとしても、契約内容が請負契約であれば課税文書になる可能性があるのです。加えて、請書であっても印紙の貼付が不要なケースもあります。
参考:国税庁「請負に関する契約書」
J-Net21「印紙はすべての契約書に必ず貼るものなのですか?」
請書に印紙が不要となるケース
請書であっても印紙が不要になるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
契約金額が1万円以下の場合
請書に記載された契約金額が1万円未満の場合は、印紙を貼る必要はありません。
ただし、具体的な契約金額の記載がなく、1万円未満であることが分からない場合は、200円の印紙を貼らなくてはなりません。
また、消費税を含めると1万円以上になる場合は、印紙が必要です(消費税が明確に記載されている場合を除く)。
もし貼るべき印紙を貼りそびれてしまうと、罰則が課される可能性もあります。
詳しくは後述しますが、契約金額が税込・税抜どちらなのか、消費税額が明確にされているかは、よく確認しておきましょう。
物品購入に関する請書の場合
請書が物品購入に関するものの場合、印紙は不要です。物品の購入は「売買契約」であり、請負契約には該当しないためです。
請負契約は、たとえば橋の建設工事のように契約した作業が完了した際に、その対価として代金を支払うことを約束します。つまり、「モノの完成」に重きを置いています。
一方、売買契約は代金を支払うことを対価に、物品を引き渡してもらうことを約束するものに過ぎません。言い換えれば、所有権の移転という一面に重きを置いていると考えられます。
ただし、請負契約と売買契約が混在し、両方で印紙税の賦課が見られる場合も十分にあり得ます。内容をよく確認し、どちらに該当するか見極めてください。
参考:国税庁「請負の意義」
電子契約をした場合
請負契約を電子契約で締結した場合も、印紙は不要です。課税文書は、書面(紙)で作成したもののみが該当すると見なされているためです。
また電子契約をした契約書を印刷しても、後から課税文書と見なされることもありません。印刷したものはあくまでも原本の「写し」であると考えられるからです。
請書における印紙の基本知識
ここからは、請書に使用する印紙について知っておきたい基本的な内容を、順に解説します。
印紙の金額
請書に貼付する印紙の金額は、以下のとおり請書に記載された契約金額によって異なります。
記載された契約金額 |
税額(必要な印紙の金額) |
---|---|
1万円未満のもの |
0円(非課税) |
1万円以上100万円以下のもの |
200円 |
100万円を超え200万円以下のもの |
400円 |
200万円を超え300万円以下のもの |
1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの |
2,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの |
2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの |
6万円 |
契約金額の記載のないもの |
200円 |
参考:国税庁「請負に関する契約書」
なお、印紙の金額は契約金額が50億円を超えるものを最大とし、段階的に設定されています。
印紙を負担・貼付する人
印紙税法第3条では、印紙税を負担し、印紙を貼付する人を以下のとおり定めています。
- 印紙税を収める(印紙を貼付する)のは、請書の作成者
- ただし請書を共同で作成した場合は、双方が負担する
実務上よく行われるのは、最終的に所持するほうが印紙税を負担する方法です。
なお、双方が控えとして持つため同じ請書を複数作る場合は、それぞれの請書に印紙の貼付が必要です。
双方が1通ずつ所持する場合は、結局のところ、「折半した」ことと同じ結論になっているのです。
参考:e-Gov法令検索「印紙税法」
印紙の貼り方・消印の押し方
印紙の貼り付け場所に決まりはなく、書面の余白に貼れば問題ありません。
契約書の左上に貼り付けることが多いため、迷った場合は左上に貼りましょう。
貼り付けた印紙には、「消印」をする必要があります。印紙と請書にまたがるように、以下のいずれかを行いましょう。
- 角印や氏名や名称の入った日付印・ゴム印の捺印
- 署名(氏名や屋号など)
ただし、鉛筆やシャープペンといった後から消せる筆記用具での署名や、記号・斜線は、消印として使えません。
なお、消印後に契約書が不要となったり、内容を間違えたため取り消したりしたい場合は、税務署に申告すれば還付を受けられます。
印紙の購入場所
収入印紙は、以下のような場所で購入できます。
- 郵便局
- 法務局
- コンビニ
- 金券ショップ
購入は難しくなく、店頭や窓口で希望の金額を伝えて支払うだけです。基本的に現金での購入となり、クレジットカード・電子マネーは使用できないこともあります。
事前に必要な印紙の金額分の現金を用意しておきましょう。
ただし、コンビニでは200円の印紙しか取り扱っていないことも珍しくありません。
契約金額が高額になるほど、高額な印紙が必要になります。印紙は全31種類ありますが、規模の大きい郵便局や法務局では全種類購入できます。
必要な金額に応じて、購入先を変えると良いでしょう。
請書に印紙を貼付しないとどうなる?
請書に必要な税額分の印紙を貼らなかった場合、または貼ったものの割印を忘れた場合は、「過怠税」が課されます。
過怠税が課されると、貼るべき印紙額の3倍相当を収めなくてはなりません。契約金額によっては額が大きくなることもあるため、注意が必要です。
ただし貼り忘れに気づいた際、所轄税務署長へ自分から申し出れば、過怠税は印紙額の1.1倍に減額されます。
なお、不正な方法で印紙税の支払いを免れた場合は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金(刑事罰)の対象となります。
請書に印紙が必要な場面を覚えておこう
売買契約以外の請書で、かつ記載された契約金額が1万円以上の場合は、印紙が必要です。必要な印紙の金額は契約金額によって異なります。
事前によく確認し、適切な額の印紙を貼りましょう。このとき、消印をすることも忘れないでください。
印紙が必要にもかかわらず貼り忘れてしまうと怠税が課され、最低でも必要な印紙額の1.1倍の追加納税が求められます。
まずは請書の内容を慎重に確かめ、ミスなく処理できるよう努めましょう。
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