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再委託とは? 外注との違いや可否、発注側・受注側の注意点を押さえよう

監修者:弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士  上米良 大輔

再委託とは? 外注との違いや可否、発注側・受注側の注意点を押さえよう

自社の事業をスピーディーに進めるうえで、再委託が必要になることがあります。しかし、再委託における注意点やポイントをきちんと理解しておかなければ、トラブルに巻き込まれたり、思ったような制作物を作ってもらえないリスクがあります。

この記事では、法務部で委託契約などを取り扱う社員に向けて、再委託の概要やメリット、デメリットを紹介します。また、この記事の後半部分では、再委託において気をつけるべきポイントをまとめました。

ぜひ最後までご覧ください。


再委託とは

再委託は、特定の業務を任された企業が、その一部を他の事業者に任せることです。アウトソーシング企業や輸送業界などで頻繁に見られます。

ここで、外注との違いや契約形態によって異なる再委託の可否について解説します。

外注との違い

外注とは、一般に外部の事業者に対して業務を依頼することを指します。再委託とは、外注に含まれる概念です。

もともと他から委託された業務の一部を、別企業へ発注します。つまり、外注においては、再委託が生じないケースもありえます。

契約形態によって異なる再委託の可否

再委託は請負契約においては委託元から認められていますが、委任契約では認められません。

  • 請負契約:仕事を完成させることを内容とする契約であり、発注元は完成した仕事に対して対価を支払う
  • 委任契約:委任された行為を任せる契約

請負契約は依頼された業務が完成すればよいため、注文者からの禁止がなされない限りは、自らの裁量で再委託の契約を交わせます。

しかし、委任契約は信頼関係をもとに契約することが前提とされているため、委任者からの承諾を得られない限り、再委託契約を交わせません。


再委託を許可するメリット

再委託するメリットを3つ紹介します。

  • 業務量が多い仕事を分担できる
  • スピーディーに制作物が仕上がる
  • 人件費を抑えることができる

業務量が多い仕事を分担できる

再委託することで、業務量が多い仕事や大規模な業務を複数の業者に分担できるため、負担が分散し、効率的に業務を進められます。

特に、ITの現場では再委託が多用されています。例えば、システム開発の現場では、開発を受けたベンダーが別の業者に再委託することにより、特定の技術を持つ業者の力を最大限に活用できるでしょう。

スピーディーに制作物が仕上がる

再委託により、制作物をスピーディーに仕上げられる可能性があります。一つの業務を複数の業者に分担することにより、各業者が同時並行で作業できるからです。

結果として、全体の制作時間を短縮できます。

業務量が多くなるほど自社のリソースで対応することが難しくなるため、再委託は有効な手段になるでしょう。

人件費を抑えることができる

業務量の多い仕事を委託先にて独自で対応すると、常時、対応できるスタッフを確保・雇用しておく必要があります。

しかし、受託する業務により業務量は異なるため、状況によっては雇用による人件費が必要以上に多くかかる可能性があります。

再委託することで、業務量に応じた体制を柔軟にとりやすくなるでしょう。


再委託によって生じるデメリット・リスク

続いて再委託するデメリットや、リスクをまとめました。

  • 情報漏洩等のリスク
  • 作業の進行状況が把握しづらい

情報漏洩等のリスク

委託先が情報漏洩等の問題を起こすと、漏洩の事実が多くのステークホルダーに影響を与える可能性があります。また、自社の評価や信用も損なわれるでしょう。

情報漏洩を未然に防ぐためには、委託先企業の情報セキュリティ対策の実施状況を把握し、必要に応じて追加の情報セキュリティ対策の実施を要請しなければなりません。

作業の進行状況が把握しづらい

再委託では、委託先が自社とは異なる作業環境やワークフローを持っている場合、その進行状況を確認し、必要なフィードバックを提供するのが困難になる可能性があります。最悪の場合、プロジェクトの遅延や品質の低下を引き起こすかもしれません。

進行状況を十分に把握するためには、委託先とのコミュニケーションを頻繁に行い、透明性を確保することが重要です。また、業務の指示や命令を個別に出しにくく、コントロールがしにくいというデメリットもあります。


【立場別】再委託における注意点

再委託の注意点を、発注元や受注者側、双方などの立場別で解説します。

発注側が注意すべきこと

再委託における発注者側の注意点をまとめました。

委託先に対する契約書

発注者(委託元)は、委託先に対して確実に再委託の内容を伝え、双方の責任を明確にするための契約書が必要です。契約書の作成は法的義務ではありませんが、委託で起こりうる多くの問題を回避できるでしょう。

契約書には次のような内容を明記するのが一般的です。

  • 業務内容
  • 納期
  • 権利
  • 責任
  • 著作権

再委託の契約書を委託先とチェック

発注元は、委託先と再委託先が締結した契約内容を必ずチェックしましょう。考えられるリスクを減らすためにも、発注元が委託先と結んだ契約内容と同等のものを、再委託先へ結んでもらうのがポイントです。

また、発注元と委託先との間で、再委託が生じる場合のルールとして当該ポイントをいれておくとよいでしょう。委託先再委託先の間に既に信頼関係があったとしても、必要十分な契約を結ぶように三社で話し合うことが大切です。

委託の階層と各業務のチェック

再委託する際には、発注者側が再委託の契約書を、委託先と細かくチェックするのが大切です。トラブルの原因となり得る契約内容の誤解や不明点を、未然に防げるためです。

発注者と委託先が一緒に契約書をチェックすることで、双方の認識が一致し、後々のトラブルを避けられるでしょう。

受注側が注意すべきこと

再委託における受注者側の注意点をまとめました。

適切な再委託先を選択

委託先(受注者)は再委託する事業者を適切に選ばなければなりません。再委託先への責任は、委託側にあり、再委託先において生じた問題は、発注者との関係では委託先の責任となるためです。

再委託先の監督義務を確認

業務の進行状況を定期的に確認し、必要な場合には指導や助言をしましょう。業務の品質を確保し、期間内に目標を達成することにつながります。

また、再委託先が関連法規を遵守しているかどうかもチェックしましょう。例えば、労働法規や業界の特定の基準などが含まれます。

法令違反が発覚した場合、受注者としても重大な影響を受ける可能性があります。

共通して注意すべきこと

再委託において、発注者側と受注者側の双方の注意点をまとめました。

著作権について

委託先と再委託先との間で、著作権に関する取り決めをしておく方がよいことがあります。

例えば、システム開発やWebサイト制作など、創作的な作業を委託する場合、その成果物は基本的に著作物になります。

そして、これらの著作物の著作権は、制作者である外部委託先に生じますが、最終的な帰属先は、発注者と委託先の間で結ばれた契約内容によって決まります。

したがって、委託先が委託元との関係等から、再委託先から著作権の譲渡を受けておきたい場合、当該譲渡を受ける旨の合意を再委託先と行っておく必要があります。

情報共有と状況確認の徹底

再委託では、発注元と委託先、そして再委託先との間での情報共有と状況把握が非常に重要です。定期的な進行状況のレポートやミーティングを設け、発生した問題や変更事項について円滑にコミュニケーションを取りましょう。

特に、プライバシー情報などの取り扱いが関わる場合や、複数の再委託が連鎖的に行われると、情報漏洩のリスクが高まります。

再委託の権利

2014年に発生した大規模な個人情報漏洩事件以降、発注元と委託先の両者に対して再委託先の厳しい管理が求められています。委託先には次のような行動や意識が求められます。

  • 再委託先が適切な業務を行い、情報を適切に管理するよう指導・監督
  • 発注元と再委託先との間で情報を適切に共有できるように調整

一方、発注元は、委託先や再委託先の管理も徹底しなければなりません。情報が漏洩した場合、委託先に非があったり、管理が不適切だったりしても、発注元も責任を問われることがあるためです。


再委託についてのまとめ

再委託は特定の業務を委任された企業が、その一部を他の事業者に任せることです。商品やサービスの品質向上や業務効率化などの利点がありますが、情報漏洩が起こるリスクも考えられます。

再委託契約する際は、条件を詳しく明記し、企業間のトラブルに発展しないように気をつけましょう。


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監修者プロフィール

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上米良 大輔

弁護士法人山本特許法律事務所 パートナー弁護士

2009年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、2012年にオムロン株式会社に社内弁護士第1号として入社、以降約7年にわたり企業内弁護士として、国内外の案件を広く担当した。特にうち5年は健康医療機器事業を行うオムロンヘルスケア株式会社に出向し、薬事・ヘルスケア規制分野の業務も多数経験した。

2019年、海外の知的財産権対応を強みとする山本特許法律事務所入所、2021年、弁護士法人化と共にパートナー就任。知的財産権案件、薬事規制案件を中心に、国内外の案件を広く取り扱う。

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