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所定労働日数とは? 基礎知識から計算方法、注意点までわかりやすく解説

所定労働日数とは? 基礎知識から計算方法、注意点までわかりやすく解説

「所定労働日数」は労務管理の基本ですが、計算方法や理解を誤ると従業員の休暇や割増賃金の処理でトラブルが発生することもあります。似たような用語も多いため、間違えないようにきちんと理解しなければなりません。

本記事では、所定労働日数の基本的な意味や正しい計算方法、さらに見落としがちな注意点について詳しく解説します。

これを読めば、労務担当の方はより正確な判断ができるようになり、トラブル回避にもつながるでしょう。ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
マネーライフワークス  代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP 

所定労働日数とは

「所定労働日数」とは、自社の従業員が働かなければならない日数として会社が定めた日数のことです。

従業員の入社時に取り交わす「労働契約書」や、自社の労働条件をはじめ服務規律などを定めた「就業規則」に記載されています。

実労働日数との違い

似た単語に「実労働日数」がありますが、これは実際に従業員が働いた日をカウントした日数のことです。

所定労働日数はあくまでも、社内で決定した日数に過ぎません。

実労働日数では、労働時間の長短を問わずたとえ1時間でも出勤すれば、実労働日数1日として数えます。有給休暇を取った日のように、実際に働いていない日がある場合もカウントしません。

参考:和歌山労働局「統計用語の解説

所定労働時間の関係性

もう1つ似た言葉として、「所定労働時間」があります。こちらは所定労働日数と深く関連しているため、双方の関係性を理解しましょう。

所定労働時間とは、労働契約で定められた労働時間のことです。始業時間から就業時間までの間から、休憩時間を差し引いた時間を指します。

所定労働日数と所定労働時間が重要な理由は、従業員への割増賃金の支払いに影響があるためです。詳しくは後述しますが、もし片方に誤りがあると、従業員に渡すべき割増賃金の金額にも誤りが生じます。


所定労働日数を定める2つの必要性

所定労働日数は、割増賃金の算出・有給休暇付与日数や条件確認などを行う際に必要となるものです。それぞれの内容について、詳しく解説します。

1.割増賃金の計算

従業員が時間外労働をした場合、会社側は割増賃金を支払います。割増賃金は、原則として個別に計算して支払う必要があり、この計算に使うのが所定労働日数です。

割増賃金は、時間外労働1時間ごとに支払わなくてはならないものであり、1時間あたりの賃金に割増率を掛けて算出します。1時間あたりの賃金は、月給を1カ月の平均所定労働時間で除して出さなくてはなりません。

しかし1カ月の平均所定労働時間を求めるためには、まず年間所定労働日数に、1日の所定労働日数を掛け、それを12カ月で除する必要があります。こうしたことから、所定労働日数を把握しないことには、割増賃金の算出も不可となります。

2.有給休暇の付与条件や日数の確認

所定労働日数は、週4日以下または年間216日以下の勤務としている従業員に、有給休暇が何日付与できるかを判断する基準になります。

企業は、以下の条件を満たした従業員には有給休暇を付与しなくてはなりません。

  1. 雇い入れた日から6カ月経過している
  2. その期間の全労働日(所定労働日数)の8割以上出勤した

有給休暇の日数は全従業員で一律ではなく、所定労働日数によって異なります。また、パートタイム労働者のように週の所定労働日数が少ない労働者にも付与する必要があります。

こうした観点からも、所定労働日数を定めることは重要なのです。

参考:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。


所定労働日数を算出する計算方法

所定労働日数を計算する前に、「年間所定労働日数」「月平均所定労働日数」の算出が必要です。それぞれの計算方法を、順に解説します。

年間所定労働日数

年間所定労働日数は、以下のとおり計算します。

年間所定労働日数=1年間の暦日数(365日※)-年間休日数
※うるう年の場合は、366日

たとえば、年間休日110日としている企業の年間所定労働日数は、365-110=255で、255日です。うるう年があることや祝日の位置が変わることもあり、毎年同じ日数にはなりません。

月平均所定労働日数

月平均所定労働日数は、年間所定労働日数を12カ月で除して算出します。計算式にすると、以下のとおりです。

月平均所定労働日数=年間所定労働日数÷12

たとえば、年間所定労働日数が180日の場合、月平均所定労働日数は180÷12=15で、15日となります。

また、年間所定労働日数に小数点以下の数値が出る場合があります。たとえば年間所定労働日数が260日の場合、月平均所定労働日数は260÷12=21.6…です。小数点以下の扱いは決まっていませんが、以下のいずれかで対応します。

  • 小数点以下を切り上げ
  • そのまま21.6日として処理する

なお、小数点以下の切り捨ては行わないようにしましょう。本来の労働日数より少なくなってしまい、労働者の不利益になるためです。


所定労働日数を扱う際の注意点

所定労働日数については、いくつか注意点があります。

  • 所定労働日数には上限がない
  • 休日は就業規則や労働条件通知書に記載する
  • 休日手当の支払いが必要になるケースがある
  • 欠勤控除を行わなければならないことも

上記の内容も知ったうえで、処理をしましょう。

所定労働日数には上限がない

「所定労働日数は年間何日まで」といった上限はありません。そのため、会社ごとに設定が可能となっています。

ただし労働基準法で定められている「毎週1日または4週で4日以上の休日」は必要です。そのため、生産性とワークライフバランスの両方を考えたうえでの設定が不可欠でしょう。

休日は就業規則や労働条件通知書に記載する

所定労働日数は、祝日やうるう年があることから、年によって多少変動します。そのため、就業規則や労働条件通知書に休日の数を記載し、所定労働日数が算出できる状態にしておかなければなりません。

どの日を休日とするか定めておき、就業規則に記載しましょう。業務の内容や難易度・業務量などを考慮したうえで、適正な休日の日数が設定されているか、就業環境が労働者にとって快適かどうかも配慮してください。

就業規則への記載方法は、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」の「休日」の部分が参考になります。

休日手当の支払いが必要になるケースがある

従業員が休日出勤したことで実労働日数が所定労働日数を超えた場合は、休日手当の支払いが必要です。

支払うべき手当の金額は、出勤した日が法定休日か法定外休日かで変動します。まずは出勤した日が、就業規則や労働条件通知書に記載の法定休日に当てはまるか確認するところから始めてください。

欠勤控除を行わなければならないことも

実労働日数が所定労働日数以下の場合は、欠勤控除を行います。

しかし、欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」に則って行われる処理であるため、控除の方法は勤務形態・給与形態により異なります。加えて、雇用形態によって控除の方法が決まっているわけではなく、どの雇用形態・給与形態であるかで対応を変えなくてはならないのです。

勤務形態ごとの対応は以下のとおりです。

勤務形態

控除の方法

定時勤務

欠勤した日数分を控除

フレックスタイム制

(コアタイムありの場合)

清算期間の総労働時間に満たない時間分だけを控除

変形時間労働制・シフト制

欠勤した日の、日ごとの所定労働時間分だけ控除

給与形態ごとの対応は以下のとおりです。

給与形態

控除の方法

完全月給制

控除不可

日給月給制

欠勤した日数分を控除

日給制または時給制

実際に労働した日または時間の分のみ給与を支払う(欠勤控除なし)

歩合制

基本給1日分の給与を算出し、その分だけ控除する

年俸制

年俸額を所定労働日数で除して算出した、1日当たりの給与を控除

注意点としては、給与形態・勤務形態の両方を考えて対応する必要があることです。たとえば勤務形態は定時勤務、給与形態が完全月給制の会社の場合、「勤務形態的には控除できるが、給与形態的には控除できない」という状況になります。

こうしたケースについては、完全月給制であっても「1日あたりの給与額を割り出し、欠勤した日数分の控除を行う」方法で対応している会社が多いです。

また、定時勤務の場合は、「1時間あたりの時間給✕1日の所定労働時間」分の給与を欠勤控除として控除すると就業規則に規定している会社が多数あります。


所定労働日数についてのまとめ

所定労働日数は、有給休暇の付与日数や割増賃金といった内容の算出に使う項目です。これらの取り扱いは、労働者からの信用に繋がる大切な部分でもあり、ミスなく算出して与えなくてはなりません。

そのためにも、まずは基本を正しく把握しておきましょう。そのうえで、実務を執り行ってください。


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監修者プロフィール

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岡崎 壮史

マネーライフワークス 代表/社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

生命保険の営業や不動産会社の営業企画を経て、1級FP技能士とCFPを取得。

平成28年に社会保険労務士試験に合格。その翌年にマネーライフワークスを設立。

現在は、助成金申請代行や助成金の活用コンサルを中心に、行政機関の働き方改革推進事業のサポート事業や保険などの金融商品を活用した資産運用についてのサイトへの記事の執筆や監修なども行っている。

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