懲戒免職とは? 判断基準や処分時の注意点を解説
懲戒免職とは公務員に対する懲戒処分の一種で、解雇に相当します。法律で制定された処罰であり、民間企業でいうところの「懲戒解雇」にあたります。
企業で懲戒解雇を行う場合は、不当解雇にならないよう適正な手順や原則を守る必要があります。
この記事では、懲戒免職(懲戒解雇)の基礎知識や判断基準、処分時の注意点をわかりやすく解説します。
懲戒免職とは
懲戒免職とは、公務員に対する懲戒処分の一種で、解雇に相当します。懲戒免職は、民間企業でいうところの「懲戒解雇」にあたります。
懲戒免職のルールは、国家公務員法や地方公務員法などの法令や指針によって定められています。
一方で、懲戒解雇は企業の従業員を対象とした処分で、労働基準法で定められたルールの範囲内であれば、会社が独自に懲戒解雇の内容を決めることができます。
懲戒免職(懲戒解雇)による従業員への影響
懲戒免職(懲戒解雇)が行われると、対象となる公務員や従業員にどのような影響があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
退職金
公務員が懲戒免職になった場合は、基本的に退職金は支給されません。
退職後であっても、在職期間中に懲戒免職相当にあたる行為があったと認められた場合などは、退職金の返納を求めることができます。
会社員の懲戒解雇の場合は、会社の就業規定で退職金を支給しない旨が明記されているからといって、不支給になるとは限りません。
懲戒解雇に至った経緯や従業員の過去の勤務態度、その会社が過去に支給した退職金の割合的な事例などを考慮しながら、従業員の行為が在職中の功績を帳消しにするほどのものであるかどうかが考慮されます。
再就職
懲戒免職(懲戒解雇)になったことは、面接で退職理由を聞かれたときにわかってしまうことがあります。また、懲戒解雇が理由で退職すると、離職票では「重責解雇」という扱いとなり、そこから懲戒免職になった事実が知られることもあるでしょう。
懲戒免職になっても再就職ができなくなるわけではありませんが、それに相当する行為があったことは社会的な信用に大きく影響し、スムーズに再就職先が見つからない可能性があります。
懲戒免職(懲戒解雇)の判断に用いられる7原則
ここでは、懲戒免職(懲戒解雇)の判断に用いられる7原則を解説します。
1. 罪刑法定主義
犯罪として処罰される行為や刑罰の内容などを、事前に法律で規定しなければならないという原則です。懲戒処分の場合も、刑罰同様、対象者に不利益を課すものであることから、懲戒処分の種類や要件を就業規則に明記するなどの対策が必要です。
2. 個人責任
懲戒処分の対象となる行為について責任を負うのは当人だけであり、連帯責任は無効になるという原則です。例えば、個人が行ったことに対して、同じ部署の従業員全員を懲戒処分にすることはできません。
ただし、就業規則に規定があれば、該当者の上司に対して管理責任を問うことは可能です。
3. 二重処分の禁止
同一の行為に対して2回以上、懲戒処分を科すことはできないという原則です。
問題行動が発覚してから長年経過したことについて突然処分を下したり、過去に処分を下したことを蒸し返して処分することは禁止されています。
4. 遡及処分の禁止
懲戒処分に関するルールを変更した場合は、その後の問題行動のみに新ルールを適用するという原則です。ルールの改変前に規定されていなかった事項を懲戒処分の理由にすることはできません。
5. 平等取扱い
以前、似たような事案があった場合は、その処分と同程度の処分を下すべきという原則です。「相手が嫌いだから」などの理由で、重い処分を下すことは認められていません。
6. 適正手続き
懲戒処分は、適正な手続きによって行われる必要があるという原則です。就業規則や労働協約に懲戒処分の手続きの定めがある場合は、それに従って手続きを進める必要があります。また、本人の弁解を聞くことなく処分を下すことも禁止されています。
7. 合理性・相当性
懲戒処分には、客観的かつ合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要であるという原則です。対象となる行為に対して重すぎる処分や、必要のない処分を行うことはできません。
懲戒免職(懲戒解雇)が相当・不当になるケース
ここでは、懲戒免職(懲戒解雇)が相当・不当になるケースをそれぞれ紹介します。
懲戒免職(懲戒解雇)に相当するケース
まずは、懲戒免職(懲戒解雇)に相当するケースを見ていきましょう。
業務上の地位を利用した犯罪行為
経理職員による横領行為、営業職員による空発注などが該当します。会社への損害が大きく、懲戒処分に相当するケースが多いと考えられます。
経歴詐称
学歴や保有資格を偽って就職した場合は、採用プロセスへ大きな影響を与えたとして懲戒処分が許されることがあります。
無断欠勤を繰り返す
無断欠勤は職場の秩序を見出し、損害を与えます。労働契約で定められた所定労働日を守らないことは重大な債務不履行となり、懲戒処分の対象になります。
懲戒免職(懲戒免職)が不当になるケース
続いて、懲戒免職(懲戒解雇)に相当するケースを見ていきましょう。
客観的に合理的な理由がない
客観的に合理的な理由とは、第三者から見てやむを得ない理由のことです。上記のとおり経歴詐称や無断欠勤などがあげられます。
社会通念上の相当性がない
社会通念の観点で、その処分が行為に対して相当であると認められなければ、懲戒解雇が不当になることがあります。
懲戒免職(懲戒解雇)の実施手順
ここでは、懲戒免職(懲戒解雇)の実施手順を解説します。
1.事実関係の調査
まずは、懲戒免職(懲戒解雇)の根拠となる事実関係について調査を行います。
懲戒解雇の原因となる企業秩序違反行為があり、かつ従業員がそれを認めている場合は、事実調査の重要性は、さほど大きくないといえます。しかし、関係者で認識が異なる場合や、対象となる従業員が企業秩序違反行為を否定している場合などは、事実関係の調査が重要です。
問題となっている企業秩序違反行為の当事者だけでなく、関係者にヒアリングを行うこともあります。
2.懲戒解雇の決定
懲戒処分には、戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。事実関係がわかったら、懲戒解雇処分をすべきかどうかも含めて、懲戒処分の内容を検討します。
3.対象となる従業員への処分内容の通知
どのような理由により懲戒解雇を下すのか、従業員に対して通知します。
就業規則で通知形式が決まっていない限りは、口頭でも書面でも通知は可能です。通知は、制裁に対する会社の意思と、懲戒解雇の正当性を示すために行います。
解雇を受けた者は、解雇理由書の証明書の交付を受けることができるとされているため、その書面としての意味合いもあります。
懲戒免職(懲戒解雇)を行う際の注意点
懲戒解雇を行う上での注意点として、次の点があげられます。
従業員に弁明の機会を与える
懲戒処分は対象となる従業員に不利益を与える処分であるため、適正手続の観点から、対象となる従業員に対して弁明の機会を与える必要があります。
懲戒解雇を行う理由を明示する
懲戒解雇を行う際は、それだけの客観的・合理的な理由があり、懲戒解雇とすることが社会通念上相当であるといえることを示さなければなりません。理由を詳細に記載した書面を、対象となる従業員に交付します。
懲戒免職(懲戒解雇)についてのまとめ
懲戒免職(懲戒解雇)の基礎知識や判断基準、処分時の注意点を解説しました。
懲戒免職は国家公務員法や地方公務員法、およびこれらに関する指針に従って行われます。一方の懲戒解雇は労働基準法に従って行われます。
企業においては、不当解雇を避けるためにも、就業規則に懲戒解雇のルールを明記しておくなどの対策をしっかりと行いましょう。本人の弁解を聞くことや、処分の内容が行為に対して相当であるかなどを判断することも重要です。
迷ったら専門家の判断をあおぐなど、慎重に進めることがトラブルを防ぐコツです。
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