FS(フィジビリティスタディ)とは? 意味や実行する手順をわかりやすく解説!
FS(フィジビリティスタディ)は、企業が新事業等を行う際にその実現可能性を調査・検証することです。
新しい事業やプロジェクトのリスクを減らし、成功確率を高めるためには手順を踏んで行うことが大切です。
今回は、効果的なFSを実施するための手順とポイントをわかりやすく解説します。実際にFSを行った事例も複数紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
FS(フィジビリティスタディ)とは?
まずは、FS(フィジビリティスタディ)とは何かについて解説します。
FSの意味
フィジビリティスタディ(Feasibility Study)とは、「実現可能性調査」と訳されるビジネス用語で、FSと表現されます。
FSは、企業の新事業や新商品・新サービス、新プロジェクト等の新たな取り組みが実現可能なものか、また、どれくらいの利益が見込めるかを事前に小規模で実装・実行するなどして調査・検証することです。
この調査・検討の範囲は広く、新事業等が技術的や価格的に実現可能かどうかはもちろんのこと、新事業が企業理念と合致しているか、市場動向や社会の動向、財務面・経済面などさまざまな角度から調査・検証を実施します。
FSとPoCの違い
FSと似た用語であるPoCは、「Proof of Concept」の略であり、「概念実証」と訳されます。新技術や新商品を導入する前に技術面やコスト面、運用面などから得られる効果を検証することです。
FSとPoCの定義は似ていますが、FSのほうが調査・検討の範囲が広いため、通常はFSを行ったあとにPoCを行い、計画の精度を高めます。
FSで市場調査や社会動向、経済動向の分析など広い視点で調査・検証・検討を行い、PoCで技術面やコスト面から実現できるか調査・検討をするイメージです。
FSを実行する手順
FSを最大限に活用するには、手順を踏んで行わなければなりません。ここからは、FSを実行する手順について解説します。
課題の明確化
FSを実行する際に最初に行うことが「課題の明確化」です。
後述の「評価項目」などを参考に、自社の保有する能力や市場動向などの外部環境、新事業の実施にかかる期間など、新事業を実行するにあたっての課題を明らかにします。そして、課題解決のための期間やコストなどを特定していきます。
新事業等の課題が曖昧なままでは、FSを実行しても思うような効果が得られません。よって、第一に「課題の明確化」をすることが重要です。
要求事項のリスト化
課題が明確になった後に、課題解決のための要求事項をリスト化します。たとえば、課題解決のためには、どのような業務プロセスや技術、組織体制の構築をしていかなければならないかをリストアップします。
課題に対する要求事項を明らかにすることで、新事業等を成功させるために必要なことが明らかになるでしょう。
代替案の用意
要求事項のリスト化の後に行うのが「代替案の用意」です。先に明らかになった課題・要求事項を解決できる代替案を複数用意します。
FSの実行に先駆けて代替案を用意することで、想定外に悪い結果になってしまった場合などに即座に次の手を打つことができるため、新事業等の成功率を高めることができるでしょう。
結果の評価
FSの実行後には結果の評価を行います。FSはただ実行しただけでは意味がないため、項目に沿ってFSを評価して報告書にまとめるのが重要です。
また、FS実行後に代替案も含めて新事業等にメリットがないと判断した場合には、新事業等の中止を決断します。
報告書は、新事業等の融資や協力企業の意思決定等の重要な資料です。報告書の中身は、以下のような内容が想定されます。
- 新事業等の目的と課題
- 要求事項
- 課題や要求事項の解決・達成方法
- 効果検証による実現可能性と期待効果
FSを社内に取り入れる際のポイント
FSの実施によって、新たな取り組みのリスクを低減し、成功確率を上げることができます。以下では、効果的にFSを実施するためのポイントを2つ解説します。
評価項目を明確化し調査・検証する
前述のとおり、FSを実施するにあたって、初めに課題を洗い出し、課題解決のための要求事項を明らかにする必要があります。
その際、評価項目を明確化し、調査・検証することが重要です。
「評価項目」の内容は、新たに展開する事業や商品・サービス、プロジェクト等によって異なりますが、代表的な項目は以下のとおりです。
- ヒト・モノ・カネ情報等の経営資源
- 技術的・組織的能力
- 市場動向などの外部環境
- 新事業等の競争優位性が確保
- 新事業等の採算性
- 想定される損失やリスク
- 新事業の実施にかかる期間
評価項目を事前に明確化することで、より効果的なFSを実行できるでしょう。
実施するタイミングを決める
FSは、どのタイミングで実施するかも重要です。一般的に、以下の2つの時期を目安に、FSを実施します。
- 新事業等のアイデアや方向性が浮かんだとき
- 新事業等の構想が固まったとき
細かなタイミングは、事業や商品・サービス等の内容や規模によって変わってきますが、目安は上記の時期のどちらかです。FS自体に大きなコストがかかるようなら、新事業等の構想を充分に固めてから行うほうがよいでしょう。
FSの実例
ここからは、実際にFSを行って効果をあげた事例を3つ紹介します。
TVA(テネシー川流域開発公社)の事例
FSの最初の事例は、1993年にアメリカ大統領のフランクリン・ルーズベルトが世界恐慌対策で行った「ニューディール政策」の一つであるTVA(テネシー川流域開発公社)の設立と言われています。
TVAは、テネシー川流域にダムや原子力発電所の建設などの多くの公共工事を展開し、雇用の創出と安定化に大きな役割を果たしました。このTVAを成功に導いた要因は、FSを徹底したことにあります。
TVAの公共工事は、環境負荷も大きく、政策として行われた事業です。そのため、経済面や技術面での調査・検証はもちろんのこと、政治面や環境配慮の面からの調査・検証が行われました。
タンザニアの実例
FSの実行・評価レポートの作成を支援するイースクエアのタンザニアの事例を紹介します。この事例のクライアントの希望は「タンザニアで干し芋を製造・販売する事業が実現可能か調査・検証したい」というものでした。
イースクエアでは、FSとして干し芋用のさつまいもの種類や価格等を調査し、見本市で干し芋のテストマーケティングを行いました。
また、現地の小売店やスーパーでテスト販売を実施して市場のニーズも調査し、現地での生産が可能かどうか設備を持ち込んでの試作生産も行ったのです。
FSの結果、現地に干し芋のニーズがあり、かつ生産可能と判断できたため、干し芋の新事業が実施されました。
バングラディッシュの実例
もう一つ、イースクエアがバングラディッシュで行った事例を紹介します。
バングラディッシュでは、現地のNGOと協力して発電・蓄電装置のFSが実施されました。これは、無電力地域の低所得者層に太陽光発電と蓄電池を利用した電力供給モデル構築を目的としたプロジェクトです。
クライアントは「無電力地域の現状把握」や「電力供給モデルの実現可能性」について調査したいとの要望を持っており、その要望に応えるためにFSが実行されました。
無電力地域の生活様式等の現状把握や、電力供給モデルの実現可能性が確認できたことで、実現可能性の高いプロジェクトを作るための足がかりとなりました。
FSについてのまとめ
フィジビリティスタディ(Feasibility Study)とは、「実現可能性調査」と訳されるビジネス用語です。
企業の新事業や新商品・新サービス、新プロジェクト等が実現可能なものか、事前に評価項目を明確化して調査・検証します。
FSを効果的に行うためには、手順に沿って実施することが不可欠です。新しい取り組みを成功に導くためにも、FSを適切に実行していきましょう。
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