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アフターコロナの今だからこそのカフェ起業とは_その3

アフターコロナの今だからこそのカフェ起業とは_その3

最近「飲食店経営って昔からの夢のひとつだったんですよ。

今なら、家賃相場も少し下がっているし、空き店舗も増えている気がするし、この機会に自分のお店を持ってみたいんです」

という飲食店での起業相談が増えています。

コロナによる行動制限は、飲食店業界に大きなダメージを与え、たくさんの飲食店が廃業や一時退店に追い込まれています。

しかしその一方で、焼肉やテイクアウト専門のデリカフェなど新しい業態も出現しています。

そこで本日は、「自分のお店を持つことが夢」とお考えのみなさまと一緒に、近年身近になったM&Aの手法で飲食店のオーナーになる方法について考えたいと思います。


この記事の著者
  中小企業診断士 

このグラフは、最近の飲食業の倒産件数の推移を示しています(東京商工リサーチ調べ)。

休業給付金、補助金、特例融資など、政府のコロナ対策の成果で近年の倒産件数は、むしろ減少から横ばいで推移していました。

一方で、コロナを要因とする倒産の割合が半数に迫る勢いとなっており、2022年度、その傾向はさらに加速しているようです。

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飲食店のクローズはますます増えるのか?

帝国データバンクの調査によると、2022年10月の企業倒産は594件、前年同月(512件)を大幅に上回って今年最多を更新しました。

背景には、2022年秋以降のインバウンド需要回復への期待が高まる一方で、円安・食料品・水道光熱費の高騰・人手不足(人件費上昇)の「トリプルパンチ」があり、最後の追い打ちとなっています。

また前述の通り、多くの飲食店を支えた政府の「ゼロゼロ融資」の返済が2023年春頃から本格化する見通しのため、そのタイミングで一層、倒産件数が増えることが予想されています。


飲食店の廃業と私たちの起業にどんな関係があるのでしょうか?

「先輩たちが経営を断念するほど厳しい経営環境では、自分にはやっぱり無理かも・・・」との言葉がみなさまの頭によぎったかも知れません。

実は、それはある意味で正解でもあり不正解でもあります。

以下のグラフは、飲食店物件検索サイト大手“飲食店.COM「店舗物件探し」”に対する問い合わせ数の推移を示しています。

ご覧のように、2020年10月以降はほぼ昨年比100%を超えており、飲食店居抜き物件市場が活況となっていることがわかります。

具体的には、30坪以上の店舗登録が増えている反面、10坪以下、10~20坪の店舗の登録は少しずつ減少しています。

その理由として考えられるのは、このような検索サイトに情報が出回る前に買い手が決まってしまっている可能性があることです。

このような情報の中にあなたの希望条件に合う賃貸物件がもしあれば、すぐにでも飲食店を開業できる物件が増えているということです。

飲食店に必要な設備や内装が施された状態の物件ですので、大きなこだわりがなければ、開業資金も大きく抑えることが可能です。

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居抜き物件を探すときに気を付けたいこと

このように、開業資金を抑えることができる居抜き物件ですが、探す際には注意が必要です。顧客として利用しているときとは全く別の視点が必要になります。

例えば、厨房と客席のレイアウトや客席数、スタッフ・顧客の動線が自分のやりたい業種にフィットしているか?は非常に重要です。

レストランでの開業計画に対して、カフェの居抜き物件だと、おそらくは厨房面積が狭すぎて、必要な設備が置けないことが想定されます。

逆にカフェを計画しているのに席数を抑えて厨房を大きく取ったレイアウトでは、いくら集客を頑張ったとしても採算ラインに乗せられないことが想定されます。

次によくある失敗として、店舗を見に行ってみると想像以上にキレイで、予算をオーバーしてでも欲しくなってしまうケースです。

初期投資が大きければ、それだけ回収期間も必要になりますし、大きな売り上げが必要になります。また、準備する資金計画にも影響があります。

計画段階で家賃、諸経費、居抜き物件の造作や設備などを含めた初期費用上限を計画に盛り込んでおくことが大切です。

また同様に、いくら素晴らしい設備でも、自分のお店に不要なものは買い取らないようにします。後から不要なことが判明した場合、廃棄費用が発生します。

お店を改装しなければ搬出できないような窯などは注意が必要です。

最後は、お金の話です。こちらもよく聞く話ですが、「内見のときにあったものが引き渡しのときには見当たらない!」という行き違いをなくすためにも、造作や設備はリスト化してもらい、引き渡し時に一緒に確認し、受け渡しをするくらいにしてください。

また、リース品も注意が必要です。契約内容を事前に確認しておかないと、両オーナー間で物件の譲渡をする約束をしていたとしても、契約上それが禁止されており、誰も知らなかったというケースもよくある話です。

加えて、途中解約になるため残金の一括支払いが求められ、予定外の出費が発生し、資金計画の見直しを迫られる事例も良くお聞きします。


増加傾向の飲食店M&A

“M&A”と聞くと居抜き物件よりもハードルは上がるような気がしますが、事業譲渡という手法であれば、手続きに大きな差はありません。

以下のグラフは中小企業白書(2021年度)からの引用ですが、飲食店に限らずスモールM&Aは増加の一途をたどっています。

その要因の大きなものに、“後継者不在問題”があります。店舗の営業は黒字だが、後継者がおらず、閉店するのも忍びないため、外部に後継者を求めてお店をまるごと売ってしまうケースです。

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飲食店M&Aのメリット

事業譲渡でお店ごと譲り受けた場合、極端な場合、営業を休むことなく、昨日と同じ状態でそのままの環境で営業を継続できます。お客さまにとっては、何も変わりません。

つまり、開店にかかる手間が小さいということです。電気や水道の契約や設備点検、スタッフの雇用、教育、集客活動からすべて必要ですが、事業譲渡を利用すれば、大きな手間をかけずに飲食店を開業することが可能です。

新店長が2~3か月前から入店し、レシピ、常連、取引先、従業員の引き継ぎをしてもらうことで、関係者に迷惑をかけないようにしましょう。

売り手側にも同様のメリットがあります。

工事や解体などにかかる費用と手間を省くことができますし、従業員や顧客に迷惑をかけることも防ぐことができます。


飲食店M&Aのデメリット

飲食店M&Aは、メリットだけではありません。まず、第一に費用面です。

事業だけを譲り受ける“事業譲渡”という手法であっても、法的な手続きやお店の価値算定などに専門家の手を借りることになります。

居抜き物件を引き受けるよりもたくさんの財産を入手することになるため、費用もその分大きくなります。

M&A専門サイトなどを参考に、事前に予備知識を得ておくことをおすすめします。

次に大きなテーマは、従業員問題です。大切な従業員の処遇をどうするかによって、必要な人材がいなくなってしまう可能性があります。

必要な従業員が引き継げないとなると顧客も離れてしまい、居抜き物件と大差のない状態になってしまうことも危惧されます。

早めに入店や面談を行い、人間関係を構築することが大切です。

最後に取引先との関係です。従業員同様に前経営者の人柄や信用で取引条件が決まっているケースがよくあり、経営者の交代を機会に取引条件の変更を依頼されたり、商品やサービスが勝手に変更にされたりするトラブルもあります。

一方、売り手側の経営者側にも、覚悟や意識が求められます。

売却して経営者が交代したのに、以前同様に自分のお店のように振る舞ったり、従業員や取引先、顧客との関係を見直さない態度だったりが原因でトラブルになるケースも散見されます。


まとめ

今回は、「いつかは飲食店オーナーになりたい」という夢をお持ちのみなさんに、コロナ禍で一気に注目が集まっている、居抜き物件を利用する方法とM&A(事業譲渡)の手法を使った起業についてお伝えしました。

飲食店に限らず、自分のやりたい仕事や、やりたいお店について考えることは、夢を実現する過程のもっとも楽しい作業です。

だからこそ、他人からの反対意見をしっかり取り入れつつ、じっくりと取り組んでいただきたいのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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