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アフターコロナの今だからこそのカフェ起業とは_その2

著者: 中小企業診断士  山本 哲也

アフターコロナの今だからこそのカフェ起業とは_その2

今回は、「起業するなら身近な飲食業かなぁ」と、なんとなくお考えの起業準備中のみなさまと一緒に、最近急増しているふたつのフードビジネスについて考えてみたいと思います。

そのビジネスとは、“フードデリバリー専業飲食店”と“キッチンカー”です。

新型コロナウイルス感染症の登場によって、私たちの身の回りで起きた大きな変化のひとつに、飲食サービスの多様化があるのではないでしょうか?

代表的な変化としては、駅前の大型店や大手チェーンが撤退し、人手不足対策やお得感から流行していたブッフェスタイルは致命的な打撃を受けました。また、換気が良い点をアピールする形で焼き肉店が急増したこと、そして、本日のテーマである“フードデリバリーの普及”と“キッチンカーの流行”があるのではないでしょうか?

いずれの新しいフードビジネスも、一斉に事業者が増加し、流行とともに競争が激化しました。そして、すでに淘汰が始まっています。

私たちスモールビジネス事業者は、どのように取り組めば良いのでしょうか?


急増していることは感じるけれど、いったいどれくらいの市場規模なのでしょう?

日々の生活の中でも急速に身近になったふたつのビジネスですが、その市場規模はまだ公式な統計データがありません。新しい市場であり、既存市場との境目が明確に定まっていないことが原因のようです。

例えば、民間調査会社などが発表しているデータを分析してみたところ、2025年度のフードデリバリー市場は4,100億円程度となる見込みです。現在多くの海外事業者がフードデリバリー事業に参入していますが、2000年に出前館がサービスを開始したところから市場が立ち上がり、2016年にウーバーが参入し、一気に市場は拡がりました。

その後、新型コロナウイルス感染症拡大による行動制限を追い風に急拡大市場となり、またたく間に激しい競争環境となりました。すでに撤退を余儀なくされる事業者も出るほど激しい市場環境となっています。

また、当初は一般の飲食店からの配送が主でしたが、近年はテイクアウト専門飲食店という業態が増加しています。これらはクラウドキッチンやゴーストキッチンなどと呼ばれ、キッチンだけの展開からキッチンすらも賃貸物件を他社と共同利用するような新しいスタイルも現れ、個人でも少額投資で飲食ビジネスに参入できる機会が増えたと言えそうです。

一方で、キッチンカーやフードトラックと呼ばれる市場についても、全国的な調査データがなく全容把握が難しい状況です。

ちなみに、東京都では2020年度には3,794軒のキッチンカーが登録されており、これは2011年度比較で2倍以上に増加している状況です。また、全飲食店の2%にあたる数値になっています。


気になるメリットとデメリットは?

テイクアウト専門飲食店やキッチンカービジネスでは、店舗に関わる内装工事などの初期投資が不要なため、初期投資が小さいことは容易に想像できるのですが、それ以外にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、接客や配食、集客など調理以外の業務の大部分を外部パートナーと連携することになりますので、人件費がほとんど必要ではなくなります。特に従来型の店舗では、人の雇用に関わるコストは非常に大きなウエイトを占めていましたので、これが外部化できれば、コストが多少高くても安定化・変動経費として考えられますので、安定経営にはプラスの要素となりそうです。

例えば、低調だろうと予測していた日に大人数での来店があり、対応できずお客さんを逃してしまったり、無理に入店させて接客クレームによって悪い評判が立ってしまうことを防げます。また、求人広告、採用業務、教育の手間や育成期間の人件費など、スタッフ雇用に関わる費用は不安定かつ大きいものですので、外部パートナーへ委託することで平準化が可能です。

また、飲食店ビジネスは、外部環境(周辺環境や人流、競合などの存在)によって来店客数が大きく影響を受けます。例えば、フードデリバリーが伸長しているのとは逆に、オフィス街の飲食店はテレワークの推進によって大きなダメージを受けています。

一方で、このふたつのビジネスモデルでは、キッチンの場所を移動したり、キッチンカーの営業場所を移動することができるため、良い事業環境の場所を転々とすることが、理論上は可能です。

また、移動することができるため、場所によってメニューを変えたり、価格やボリューム、味付け、容器の変更などいろいろなテスト検証が容易にできたりする点も、ある意味でメリットと言えそうです。

一方でデメリットとしては、ゴーストキッチンもキッチンカーも賃貸ですので、常に希望する場所で営業できるとは限りません。当然、あなたと同じように「あそこが良いかも?」と考える競合はたくさんいますので、常に競争にさらされています。また、実は、飲食店の営業許可は自治体単位であるため、出店エリアを拡大すれば、それにあわせて自治体ごとの許可を申請して得る必要があります。加えて、許可条件が各自治体で少しずつ違っており、その手続きは煩雑です。今後は徐々に統一、簡素化されていく傾向にありますが、現状では手間がかかることは事実です。


フードデリバリーをするならどんな注意が必要?

まずは、メニューと配達エリアを検討します。店内飲食とは違い、調理完了からお客様が口にするまでに15分から30分程度が経過することを見込んでおく必要があります。

例えば、チーズなどは固くなってしまうでしょうし、ソースなどの油と水分が分離してしまう、余熱で調理が進んでしまい麺類などが伸びてしまう、などが考えられます。このように料理が劣化したり風味が落ちたりすることを想定して、配達完了時に食べ頃になるような調理方法を検討することが必要になります。

また私たちの側では、お客様がいつ召し上がるのかが不明なため、衛生面などにも特段の注意が必要です。事前に「〇〇までにお召し上がりください」等の表記を行うなどの対策を講じましょう。不安であれば管轄の保健所に相談することをおすすめします。

調理面以外では、美味しさや衛生管理面への影響が大きいため、容器選びが重要な要素になります。他にも、メニューの名称や紹介文、スマホで見られることを意識した写真、価格など常に競合店を分析した対応が必要です。


キッチンカーは、車があれば始められるのか?

キッチンカーは、意外とハードルが高いビジネスです。車両自体のコストももちろんですが、保健所からの営業許可は、販売先の地域と調理を行うキッチンについて許可を得る必要があります。

また、移動販売の営業許可には、車内で盛り付けや加熱といった簡単な調理を行える「食品営業自動車」と、別の場所で包装されたパンやおにぎりなどの食品のみ販売可能な「食品移動自動車」の2種類があります。提供する食材に応じた許可を申請してください。

「食品営業自動車の許可」は、飲食店営業・菓子製造業・喫茶店営業に細かく分けられています。さらに、営業許可の基準が各自治体によって異なります。いろいろなエリアでの出店を計画する場合は、出店場所の管轄保健所の許可が必要です。

厳しい地域では、許可のない車両内や自宅キッチンでの作業を禁止しているケースがあります。まずは、管轄保健所へ確認をしてください。


まとめ

今回は、「起業するなら身近な飲食業かなぁ」とお考えのみなさんと一緒に、最近急増しているフードデリバリーとキッチンカービジネスについて一緒に考えてきました。

店舗型の飲食店よりも低投資で始められるこのふたつのビジネスではありますが、別のビジネスとして準備・検討が必要なことがたくさんあります。一方で、これらを本業ではなく、将来の飲食店開業のための準備として捉えてスタートする方も多いようです。これを機会に、先行している先輩のお話を聞いたり、保健所に相談するなど、もう少し詳しく調べてみてはいかがでしょうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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著者プロフィール

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山本 哲也

中小企業診断士

PROFILE
ライター,コンサルタント
1966年生まれ,大阪府大阪市出身。
1998年ビルクリーニング技能士取得
2019年年中小企業診断士登録
総合サービス事業会社にてオープンイノベーションによる新規事業開発を担当。得意分野は新規事業開発、事業企画、営業チームビルディング、フランチャイズビジネス

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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