フィランソロピーとは? 意味やメセナとの違い・企業での取り組み例を紹介
フィランソロピーとは、企業が行う社会貢献活動を指す言葉です。
近年、SDGsの影響もあり、「企業の社会的責任」を意味するCSR活動に注目が集まっています。社会的な課題の解決に取り組むことは企業の義務であり、フィランソロピーも、その活動の一種です。
この記事では、フィランソロピーの基礎知識やメセナとの違い、企業内における取り組み事例を紹介します。フィランソロピーに取り組もうと考えている経営者は、ぜひ参考にしてください。
フィランソロピーとは
フィランソロピーは元々「人間愛」に由来する言葉であり、現代では個人または企業による社会貢献活動を指す考え方が一般的です。日本語では「博愛主義」や「慈善」という意味で理解すると良いでしょう。
具体的には、個人が行う寄付や、企業が行う地域貢献や環境保護など、様々な取り組みがあります。このような活動を通じて社会課題の解決を目指していく考え方であると言えます。
メセナとの違い
フィランソロピーと似た言葉に「メセナ」があります。メセナとは、主に企業が文化・芸術活動を支援することです。具体的には、コンサートや美術展の開催、コンサートホールなどの文化施設を運営することなどが該当します。
メセナも社会貢献活動の一環であることから、フィランソロピーの一種と言えます。
フィランソロピーに該当する活動
ここでは、フィランソロピーに該当する活動について具体的に見ていきましょう。
ボランティア
フィランソロピーの代表的な活動はボランティアです。日本では「慈善活動」と訳されることがありますが、ボランティアの本来の意味は「自発的な活動」です。
寄付
寄付は誰でもできる活動で、ボランティアなどに参加できない人でも間接的な支援が可能です。金額の大小よりも、寄付をしたという事実が重要です。
環境保護活動
企業が行う代表的な環境保護活動には、植樹による森林保護や水資源の有効活用などがあります。ゴミ拾いも環境保護活動の一環と言えます。
国際貢献
ユニセフなどの国際機関と協力した教育啓発が代表的な例です。また、発展途上国にある素材を使用した、現地の職人によるものづくりを行うなど、事業そのものが国際貢献になっている場合もあります。
社会福祉活動
SDGs(持続可能な開発目標)のテーマでもある「誰一人として取り残さない」を実現するため、企業・個人を問わず社会福祉活動への関心が高まっています。
メンタル疾患を持つ人の社会復帰支援、障害を持つ人に向けた転職サービスの提供、医療機関向けAI問診ツールの提供など、企業がそれぞれ独自の取り組みを行っています。
国内企業によるフィランソロピーの取り組み例
日本国内の企業は、どのようなフィランソロピーの取り組みをしているのでしょうか。具体的な事例を取り上げます。所属組織や自社などでフィランソロピーに関する取り組みを実施する際の参考にしてください。
楽天グループ
インターネットやモバイルサービスを提供する楽天グループの三木谷社長と、アメリカに本社を置く米セールスフォース・ドットコムのCEOであるマーク・ベニオフ氏は、京都大学のiPS細胞研究を支援する基金として、それぞれ約2億5千万円を寄付しました。iPS細胞は、再生医療を実現するために重要な役割を果たす多能性幹細胞として期待されています。
三木谷社長は、「人の将来を大きく変える可能性が高いiPS細胞研究を少しでもお手伝いできて嬉しく思っている」と語っています。
トヨタ自動車
国内の最大手自動車メーカーであるトヨタは、中国河北省豊寧満族自治県の日中「21世紀中国首都圏環境緑化モデル拠点」共同事業の一環として、植林活動を行いました。この取り組みは、中国の諸機関やNPO法人地球緑化センターと共同で中国の砂漠化を防止するために実施されています。中国では首都圏付近まで砂漠化が拡大しており深刻な状況であると指摘されています。
いままで約8年間にわたって、東京ドーム約600個分に相当する2,800ヘクタールの植林を実施した実績を残しています。これまでに蓄積されたノウハウを活用して、これから更に中国における緑化活動が発展していくための基盤整備を目指しているようです。
味の素
うま味調味料でお馴染みの味の素は、グループとして主な事業領域である「食」「アミノサイエンス」「医・健康」で培った技術やノウハウを活用して国際貢献に取り組んでいます。
「ガーナ栄養改善プロジェクト」は、開発途上国における大きな社会課題である乳幼児の栄養不足の解決を目指すものです。ガーナでは伝統的に発酵コーンで作られるお粥を離乳食としてきましたが、それだけでは栄養不足であり、子供の成長不調を引き起こしてしまいます。そこで、味の素グループは乳幼児の栄養改善に貢献すべく、お粥に添加する栄養サプリメントを開発してきました。
味の素グループは、ほかにも様々なパートナーと連携して、世界5か国を対象とした奨学金制度、世界一斉清掃など、幅広く活動を行っています。
西友
スーパーマーケットなどの小売業を全国的に展開している西友は、無職であるニート若者たちなどに向けた就労支援プログラム「ジョブトレ」を運営する認定 NPO 法人育て上げネットを助成しています。「ジョブトレ」には、これまでに数百人の若年無業者が参加して、その約8割以上が就職して社会参加を果たしました。
西友の助成により、ジョブトレを自己負担なく受講できる「西友パック」が立ち上げられました。参加者の多くは、西友店舗での職場体験実習も行いそのまま就職しました。この取り組みは、第15回企業フィランソロピー大賞において、企業フィランソロピー賞「はたらく幸せ賞」を受賞しました。
損害保険ジャパン
大手損害保険会社の損害保険ジャパンは、子供たちが人形劇やワークショップなどを通じて緊急時の災害から自分を守るための知識を身につける「防災ジャパンダプロジェクト」を実施しています。
大企業ならではのネットワークを活かし、全国に展開される各支店が、その地域の自治体や民間企業、学校などと共同開催を行っています。これまでに開催したイベントは約200回にのぼり、参加者は約3万人を超えています。昨今、地震や津波、大雨や洪水など様々な自然災害が発生しています。このような取り組みは、子供たちの防災意識を根幹から作り上げることになります。
フィランソロピーについてのまとめ
近年、異常気象や温暖化など地球規模の環境問題が深刻化してきています。また、貧困や失業などの社会問題も様々な事例が取り上げられてきています。そして、このような緒問題に対して、個人や企業といった形態を問わず、すべての人が関心を持ち、各自ができることから取り組んでいくべきだという考え方が広まっています。
そのような価値観の変化に伴い、消費者は商品やサービスを選ぶ際も、社会貢献に積極的な企業のものを選ぼうとする傾向が若年層を中心に見られます。フィランソロピーの活動に取り組むことは、間接的な販促になるという観点からもメリットがあると言えます。
フィランソロピーの活動は幅広く、明日から取り組めるものも多くあります。本記事で紹介した企業の取り組みを参考に、自社で実行できる施策を考えてみてください。
【書式のテンプレートをお探しなら】