幸甚(こうじん)の意味は? ビジネスシーンでの使い方や注意点を例文つきで解説!
「幸甚です」「幸甚に存じます」など、ビジネスメールでよく使われる「幸甚」。
丁寧な表現だからといって、やみくもに目上の人に使えば良いわけではありません。幸甚には使い方のパターンや注意点があり、知らずに使うと恥ずかしい思いをすることも。
この記事では、「幸甚」の意味や使うときの注意点、相手や場面に応じた使いやすい言い換え表現について、例文を交えて解説します。
幸甚の正しい使い方をマスターしたい方は、ぜひお読みください。
幸甚(こうじん)の意味
幸甚は(こうじん)と読みます。漢字を分けて見てみると、幸は「幸せ」、甚は「はなはだ」と読み、甚の意味は「非常に、程度が大きくはげしい」です。
このことから幸甚は「非常に幸せである」といった意味を持ちます。
「この上なくありがたい」といった通常を超越した感謝や喜びを伝えるときに使う言葉です。
同じ意味を持つ言葉に「幸いです」があります。「幸い」と比較すると幸甚は堅い表現で、フォーマルな場で多く使われます。
幸甚を使うのはどんなとき?
幸甚は、目上の人へのメールや手紙などに使います。目上の人に謝意を伝えたり、お願いしにくいことを改めて依頼したりするときに適しています。
日常会話で使うことはなく、式典で挨拶を述べるときなど、フォーマルなシーンで話すときにのみ使う言葉です。日常会話では「幸いです」「助かります」を使いましょう。
【関連記事はこちら】
「幸いです」の正しい使い方は? 例文と言い換え表現・注意点を紹介幸甚を使った言い回し
幸甚を正しく使うためには、言い回しのパターンを習得することが必要です。幸甚を使った言い回しには、以下の3つの表現があります。
- 幸甚です
- 幸甚に存じます
- 幸甚の至り(極み)です
一つずつ詳しく解説します。
幸甚です
「幸甚です」は、感謝や喜びを丁寧に伝える表現です。
堅すぎずシンプルに伝えられるため、敬語に慣れていない新入社員でも使いやすいといえます。
まずは取引先や上司などの目上の人へのメールで「幸甚です」を使ってみましょう。
ただし、自分の過去の行動に対して「お会いできて幸甚です」と言うのは誤りです。あくまでも相手の行動に対して感謝や喜びを伝える点に注意しましょう。
幸甚に存じます
「幸甚に存じます」は、「思う」の謙譲語の「存じます」をつけて、「幸甚です」をより丁寧にした言葉です。
フォーマルなメールや文書で使い、取引先などの目上の人に「非常にありがたく思う」ことを丁寧に伝えられます。
例えば、取引先に営業社員とその上司がいる場合、営業社員の上司へ物事を依頼するときに「幸甚に存じます」を使うと良いでしょう。
ただし、「幸甚に思います」は誤用表現のため、使わないようにしましょう。
幸甚の至り(極み)です
「幸甚の至り(極み)です」は、最大の敬意を示す表現で、「この上なくありがたい」といった強い感謝や喜びを伝えるときに使います。
幸甚を使った最も丁寧な表現のため、自分よりも立場がかなり上の人に対して、強い感謝や喜びを伝えたいときに使うのが適切です。
相手の立場や使う頻度によっては、大げさな印象を与えてしまう可能性があります。特に新入社員が使うと、「馬鹿にされている」と感じる人もいるかもしれません。
多用すると「最大の敬意」の意味が薄れることにも注意が必要です。
ビジネスでの幸甚の使い方と例文
ビジネスで適切に幸甚を使うため、例文を参考に幸甚の使い方を理解しましょう。以下の3つのシーンをピックアップして紹介します。
- 感謝を伝えるとき
- お願いをするとき
- 贈り物をするとき
感謝を伝えるとき
幸甚は、ビジネスの場で受けた好意や行いに感謝を伝えるときに使います。
具体的には、賞を受けたり贈り物をもらったりした場合が該当します。
具体的に「何に感謝しているか」を文中に明記して、感謝が相手に伝わるように使用してください。
幸甚とあわせて「もらう」の謙譲語の「いただく」を使うことが多いため、覚えておくと良いでしょう。
以下の例文を参考にしてください。
- このような賞をいただき、幸甚に存じます。
- ご多用のところ、メールをいただき幸甚です。
- このような会にお招きいただき、幸甚に存じます。
- 長年にわたるご支援をいただき、幸甚の極みです。
【関連記事はこちら】
感謝状の基本的な構成と書き方 〜文例やテンプレートとともに徹底解説!〜お願いをするとき
幸甚はビジネスでお願いをするときにも使います。
具体的には、目上の人に物事を頼んだり、申し入れを行ったりする場合が該当します。
幸甚には「〇〇してもらえるとありがたい」といった意味があるため、確実な返答がほしい場合には「至急」とつけたり、日時を明示したりすると良いでしょう。
お願いしにくいことを依頼するときや、何度も同じ依頼や要望を伝えるときには、「恐縮ですが」「恐れ入りますが」を使うと、より丁寧な印象になります。以下の例文を参考にしてください。
- お忙しいところ恐縮ですが、至急、ご返信いただけますと幸甚です。
- 来月のパーティーにご出席いただけますと幸甚に存じます。
- 恐れ入りますが、〇月〇日までに資料をご確認いただけますと幸甚です。
- 今後も変わらぬご支援をいただけますと幸甚の至りです。
贈り物をするとき
幸甚は、ビジネスで贈り物をするときにも使えます。
目上の人に贈り物をするときに「受け取ってもらえたらありがたい」「気に入ってもらえたら良い」といった思いを伝えられます。
贈り物が押しつけがましく伝わらないよう、「ささやかですが」「心ばかりの」などを使うと良いでしょう。以下の例文を参考にしてください。
- ささやかですが、お受け取りいただけると幸甚です。
- 心ばかりのお礼をお送りしましたので、お気に召していただけますと幸甚です。
- お口に合いますと幸甚の極みです。
- お礼にギフト券をお送りしましたので、お納めいただけますと幸甚です。
幸甚を使う際の注意点
幸甚を使う際には注意点があります。以下の5点について、一つずつ具体的に解説します。
- 1つの文書の中で多用しない
- 「ご幸甚」という使い方は間違っている
- 幸甚の前には具体的な一言を入れる
- 社内では基本的に使用しない
- 会話ではなく文書で使用する
1つの文書の中で多用しない
幸甚を1つの文書の中で多用しないようにします。「この上なくありがたい」といった通常の範囲を超えた感謝や喜びを表す表現のため、多用すると薄っぺらくなり、言葉の重みがなくなってしまいます。
幸甚は使い勝手が良く、ついメールに書きたくなりますが、多用は控え、最大限の感謝を伝えたり無理なお願いをしたりする場合にのみ使うようにしましょう。
「ご幸甚」という使い方は間違っている
「ご幸甚」という使い方は間違っているため、使わないようにしましょう。幸甚は自分の喜びや感謝を伝える言葉で、「ご」は目上の人につける言葉です。
「〇〇してもらえるとうれしい」といった自分の思いに丁寧表現の「ご」をつけることになり、不適切です。丁寧に伝えたい場合には「幸甚です」「幸甚に存じます」を使いましょう。
幸甚の前には具体的な一言を入れる
幸甚の前には具体的な一言を入れる必要があります。「何に対して感謝しているのか」「何をしてほしいと思っているのか」を具体的に示さない限り、相手に感謝やお願いが伝わりません。
「〇〇していただき、幸甚です」「〇〇していただけますと幸甚に存じます」などと明記するようにしましょう。
社内では基本的に使用しない
幸甚は、社内では基本的に使用しないことにも注意します。目上の人を相手にした言葉のため、会社の同僚や部下には使いません。
社内では「〇〇してくれてありがとうございます」「〇〇してもらえると助かります」などの表現が適切です。社内であっても、日頃あまり顔を合わせることのない上司には使用できます。
取引先などの社外の人に使う場合、日頃から気心が知れている相手に使うとよそよそしい雰囲気になるため、相手との関係性によって判断しましょう。
会話ではなく文書で使用する
幸甚は、会話ではなく文書で使用する点にも注意しましょう。書き言葉であり口頭表現ではないため、メールや手紙などでの使用に適しています。
使い方のパターンはある程度決まっているため、この記事を参考に覚えておくと、メールや手紙でスムーズに使用可能です。
日常会話で通常を超越した感謝や喜びを伝えるときには、「幸いです」「ありがたく思います」などを使いましょう。
幸甚の言い換え表現は?
幸甚には、以下の5つの言い換え表現があります。
- 幸いです/幸いに存じます
- ありがとうございます/ありがたく存じます
- 光栄です/光栄に存じます
- 恐縮です/恐れ入ります
- 助かります
それぞれについて、使い方と簡単な例文を紹介するので参考にしてください。
幸いです/幸いに存じます
「幸いです/幸いに存じます」は、感謝や依頼を柔らかく伝えられます。めったに会わない人や立場がかなり上の人には不適切なため、使用しないようにします。
社外の人には「幸甚です」を使い、社内の人には「幸いです」を使う、と覚えておくと良いでしょう。「幸いに存じます」は「幸いです」をより丁寧にした表現となります。使い方の例は以下のとおりです。
- 先ほどの件、来週までに返答をいただけると幸いです。
- 資料をお送りしますので、ご一読いただけますと幸いに存じます。
ありがとうございます/ありがたく存じます
「ありがとうございます/ありがたく存じます」は、感謝を直接的に伝えられます。日常会話で気兼ねなく感謝を伝えたいときに使いやすく、親しい上司に使っても失礼になりません。
「ありがたく存じます」を使うと丁寧さが増すため、「ありがとうございます」ではフランクすぎる場合に使うと良いでしょう。使い方の例は以下のとおりです。
- ご返信をいただきありがとうございます。
- お忙しいところ式典にご出席いただき、ありがたく存じます。
光栄です/光栄に存じます
「光栄です/光栄に存じます」は、目上の人からもらった評価や名誉、褒め言葉にお礼を述べるときに使う表現です。より丁寧に伝えたいときは、「光栄に存じます」を使います。
同僚や部下などに対しても使用可能で、相手が誇りに思うような人物のときに適しています。
それ以外の場合では「ありがとうございます」「うれしいです」とシンプルに伝えるのが良いでしょう。
使い方の例は以下のとおりです。
- 同じチームで働けて光栄です。
- このような賞をいただき、光栄に存じます。
恐縮です/恐れ入ります
「恐縮です/恐れ入ります」は、相手への敬意と感謝を同時に示す表現です。
日常会話と文書の両方で使え、「恐縮です」は手紙やメール、「恐れ入ります」は会話で使うのが適しています。
「恐縮ですが」「恐れ入りますが」と文頭につけて、お願いするときのクッション言葉としても使えます。使い方の例は以下のとおりです。
- お忙しいところ来社いただき恐縮です。
- 早期にご対応いただき、大変恐れ入ります。
助かります
「助かります」は、相手から手助けをしてもらったときに感謝を伝える表現です。
「自分の負担が少なくて助かった」といったニュアンスがあるため、使う相手によっては、上から目線の偉そうな言葉に聞こえる場合があります。
目上の人に使うのは避けるべきで、特に新入社員は、社外・社内を問わず使用を避けるのが良いでしょう。使い方の例は以下のとおりです。
- 資料作成を手伝ってもらえると助かります。
- 急な顧客対応を代わってもらって助かりました。
まとめ
幸甚は、通常を超越した感謝や喜びを示す表現で、ビジネスシーンでは感謝を伝えるときやお願いをするとき、贈り物をするときなどに使います。
幸甚を使うときには、1つの文書での多用や誤用に注意が必要です。
また、基本的に社外の人に使う、書き言葉で使うなどの使い方のパターンや言い換え表現を知っておくことで、誤用を防げます。
使うシーンや相手を間違えると、よそよそしい雰囲気になったり、感謝や喜びの意味が薄まったりするため、注意しましょう。
幸甚の意味と使い方を理解し、ビジネスシーンで適切に活用しましょう。