「善処します」の意味や利用シーンとは? 言い換え表現も紹介
ビジネスシーンで使われることが多い「善処します」。
ビジネスマナーを守った適切な文章を作れるようになるためには、「善処します」を使うシーンや、使い方によって異なるニュアンスを正しく理解することが重要です。
この記事では、「善処します」の意味や利用シーン、言い換え表現を紹介し、使用するときの注意点もあわせて解説します。
ビジネスマナーを守った文章の作成方法を知りたい方は、ぜひご覧ください。
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「善処します」は「適切に処置する」という意味を持つ表現です。
「善」は「物事を上手に対処する」、「処」は「とりはからう」という意味で、「善処します」は「物事がうまく進むように適切な処置を行う」という意味で使われます。
顧客や上司などから依頼を受けた場面で使うことが多く、トラブルへの適切な対処や改善要望への対応を表明するときに適しています。
ただし、「前向きに検討します」「できるだけ対応します」のような曖昧な意味合いも含むため、使い方に注意が必要です。
「善処します」はどういう場面で使う?
「善処します」はどういう場面で使うのでしょうか。以下の3つの場面における使用例を紹介します。
- 一旦保留にしたいとき
- お願いや依頼をするとき
- 自分の行動を改善するとき
一つずつ詳しく解説します。
一旦保留にしたいとき
「善処します」は、回答を一旦保留にしたいときに使います。
例えば、お客様から改善要望があった件について、要望を受け入れられるかどうか不確かで、はっきり伝えることを避けたい場合などがこれに該当します。
善処しますと伝えた場合には、後日改めて正式な回答が必要です。
その場しのぎの返答としてよく利用される表現でもあるため、相手が失礼と感じることもある点に注意しましょう。
例文は以下のとおりです。
- いただいたご要望につきましては、善処します。
- ご指摘いただいた件について、チームで共有して善処します。
- いただいたご意見につきまして、前向きに善処します。
お願いや依頼をするとき
「善処」は、お願いや依頼をするときにも使えます。
相手に対応を求めたいものの具体的な手段や方法が不明瞭なときの依頼に使いやすい表現です。
「善処しますが」と前置きすると「可能なかぎり対応するが期待に応えられない場合もある」ことを事前に伝えられます。
「対処」や「対応」よりも堅い表現のためビジネスシーンに適していますが、親しい間柄の場合は堅すぎるため注意しましょう。
例文は以下のとおりです。
- チームのコミュニケーションが活発になるよう、善処ください。
- タスクの報告方法について、善処を望みます。
- 善処いたしますが、ご期待に添えないときにはご容赦ください。
自分の行動を改善するとき
「善処します」は自分の言動を改善するときにも使えます。
例えば、顧客や上司から指摘されたことについて、自らに改善の余地がある場合などに使うとスマートです。
より丁寧に伝えるときには「善処いたします」と表現すると良いでしょう。
例文は以下のとおりです。
- 同じ失敗をしないよう善処します。
- スムーズに電話応対ができるよう、善処いたします。
- 同僚とのコミュニケーションについて、善処いたします。
「善処します」の言い換え表現や類語
「善処します」の類語や言い換え表現を知っておくと、重複表現を避けたり使い分けたりすることが可能です。
「善処します」の類語・言い換え表現は以下のとおりです。
類語 |
意味 |
例文 |
努める |
精を出して仕事をすること。努力して事を行うこと。 |
早急な対応に努めます。 |
対処する |
ある事柄や状況に合わせて適当に処置すること。 |
本件については早急に対処します。 |
対応する |
周囲の状況などに合わせて事を行うこと。 |
いただいたご要望について、早急に対応します。 |
お取り計らい |
「取り計らい」の丁寧表現。物事がスムーズに運ぶよう考えて処理をすること。 |
ご多用のところ恐縮ですが、お取り計らいの程、よろしくお願いいたします。 |
一つずつ詳しく見ていきましょう。
努める
「努める」には「精を出して仕事をする」という意味があります。
「善処します」よりもソフトな表現で、努力する気持ちを伝えられます。
ただし、「善処します」と同じように曖昧さを含む表現のため、使う場面や頻度に注意が必要です。
対処する
「対処する」は「ある事柄や状況に合わせて適当な処置をする」という意味があります。
「善処します」が曖昧さを含む一方で、「対処する」は曖昧さがなく、具体的に行動する場合に適しています。
クレームなどに対して具体的な対応策を講じる場合は「対処する」を使いましょう。
対応する
「対応する」は「周囲の状況などに合わせて事を行う」という意味です。
「善処します」のような曖昧さはなく、相手に合わせた適切で具体的な処理を指します。
また、「善処します」は「良くなるために行動する」という前向きな意味を持つ一方で、「対応する」は結果の良し悪しにかかわらず使用できるため、用途が幅広いといえます。
良い結果が見込めない場面では、「対応する」を使用すると良いでしょう。
お取り計らい
「お取り計らい」は「取り計らい」の丁寧表現で、「取り計らう」は「物事がスムーズに運ぶよう考えて処理する」という意味です。
相手への気遣いや思いやりを表現しており、お願いやお礼を伝えたいときに適した表現です。
「善処します」は主語を自分にして使う一方、「お取り計らい」は主語を相手にして使うという違いがあります。
「善処します」を使うときの注意点
「善処します」を使うときの注意点は、以下のとおりです。
- 返答で使うときは注意が必要
- 「善処」は敬語ではない
- 「適切に善処します」は使わない
- 言い切りにならない表現で使わない
一つずつ詳しく解説します。
返答で使うときは注意が必要
曖昧な表現なので、関係性が薄いお客様とのやり取りに利用するのは控えましょう。
例えば、「明日までにクレームへの回答が欲しい」と言われた際、「善処します」と答えると「できるだけ対応する」という不誠実な回答になってしまいます。
曖昧な回答をされたことに相手が不信感を持ち、より大きなトラブルに発展する可能性もあります。
確実な回答を求められた場合には、「承知いたしました」や「○○日までに対応いたします」など明確に返答しましょう。
「善処」は敬語ではない
冒頭に記載したように「善処」は"物事を上手に対処する、とりはからう"の意味を持つ表現であり、敬語ではありません。
そのため、顧客に対して「本件については善処の予定です」と伝えるのは誤りです。
「善処」に丁寧語の「します」をつけると顧客や目上の人にも使える敬語表現になるため、「本件について善処します」と表現します。
さらに丁寧に伝える場合には「善処いたします」または「ご善処いただく」を使用すると良いでしょう。
「適切に善処します」は使わない
「善処します」自体に「適切な処置を行う」という意味があるため、「適切に善処します」は二重表現です。
「適切に」をつけずに「善処します」だけで使用するようにしましょう。
言い切りにならない表現で使わない
「善処します」は言い切りにならない表現で使わない点にも注意しましょう。
「善処させてください」「善処したいと思います」などのように言い切りにならない表現は誤りです。
「善処します」「善処いたします」と言い切る形で使用します。
まとめ
「善処します」は、「適切な処置を行う」という意味で、ビジネスシーンで依頼を受けたときに、トラブルへの適切な対処や改善要望への対応を表明するために使います。
また、お願いや依頼、自分の行動の改善を伝えるときにも使うことができます。
「善処します」は、「返答を一旦保留にする」のような曖昧な意味合いを含むため、注意して使う必要があります。
誤った二重表現や、「善処」自体が敬語表現ではないことなどにも注意し、「善処します」を正しく使用しましょう。
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