ロジカルシンキングとは? 意味や考え方、具体例などを紹介
ロジカルシンキングとは、簡単にいえばビジネススキルのことですが、まだまだ理解を深めていない経営者もいるでしょう。
業績をアップさせるために必要なスキルはいくつかありますが、なかでもロジカルシンキングはその代表といえます。
ロジカルシンキングとはどういう考え方をいうのか、取り組み方にルールはあるのか、業務上でのメリットや効果など、いまある疑問を徹底的に解説します。
ロジカルシンキングを活用したい、導入したいと考えている経営者や育成担当者は必見です。
ロジカルシンキングとは
まず、ロジカルシンキングとは何かを説明します。基本的な考え方を知っていくと、今後幅広く活用することができます。
ロジカルシンキングの概要
ロジカルシンキングとは、感情や主観にとらわれず、根拠と結論を分けて考える思考法です。「logical:論理的、筋道が通った」と「thinking:考え方」を組み合わせた和製英語で、論理的思考法と訳されることもあります。
コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーで使われていた思考法が、書籍で紹介されて広まりました。問題解決の原因特定や解決策の立案に効果的で、相手に納得してもらえるシナリオで物事を伝えられるスキルが身に付けられます。
意思決定や業務のスピードが上がるため、プレゼンテーションや商談、社内外のコミュニケーション、文書作成、企業の課題解決など、ビジネスでも幅広く活用されています。
ロジカルシンキングの基本的な考え方
ロジカルシンキングの基本的な考え方として、三つの推論方法があります。
- 演繹法(えんえきほう)
確定している複数の事実を組み合わせて結論を提唱します。「三段論法」ともいわれ、自分が経験していないことでも、正しい結論を導き出せるのが特徴です。 - 帰納法(きのうほう)
複数の事実から共通点を見い出し、結論を考える手法です。マーケティングリサーチやビッグデータなど、統計で用いられます。 - 弁証法(べんしょうほう)
対立する事象をすり合わせ、矛盾を解決する結論を考える方法です。新たな手法を考える時に最適です。
ロジカルシンキングを構成する要素とルール
ロジカルシンキングの意味や基本的な考え方がわかったところで、ここではロジカルシンキングを構成する要素とルールについて説明します。
ロジカルシンキングを構成する要素
ロジカルシンキングは、いくつかの要素から構成されています。詳細を見ていきましょう。
- 主張の筋が通っており、矛盾がない
ロジカルシンキングを行ううえで最も重要なのが、主張の筋がとおり、矛盾がないことです。演繹法や帰納法を活用して論拠を積み上げ、結論を出します。意思決定やコミュニケーションの場で使います。 - バイアス(思い込み)に左右されない
ロジカルシンキングでは、物事を偏りなく、バランスよく捉えて論理展開していきます。そのため、自分のバイアス(思い込み)には注意が必要です。人間は他人への好感度や思考に左右されやすく、主張がずれる可能性があるからです。 - 合理的思考に基づいている
合理的思考に基づいているかも、ロジカルシンキングには必要です。物事の優先度は意識できているか、何が重要かをつねに見極め、行動するようにします。 - 物事を分解して把握できている
ロジカルシンキングでは、物事を分解して把握できるかも重要です。情報や論理を分解することで全体像がとらえやすくなり、問題点や原因を見つけ出しやすくなります。 - 因果関係を適切に理解している
因果関係を適切に理解できるかも、ロジカルシンキングでは求められます。原因と結果を把握し、結びつけて考えられれば、問題の本質からずれることはありません。 - 言葉や数値を正しく扱っている
言葉や数値を正しく扱えるかも、ロジカルシンキングを行うのに重要な要素です。とらえ間違えると、結論が大きく変わってしまいます。言葉や数字の本質に沿っているかは逐一、確認していく必要があります。
一定のルールに沿って整理することが大切
ロジカルシンキングは、一定のルールに沿って整理することが大切です。「秩序に沿って事象を分解・整理する」段階と、「矛盾のないよう筋道を立てて考える」段階とに分けられます。
事象の分解に役立つのは、MECE(ミーシー)という考え方。「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った造語で、「モレなくダブりなく」を意味します。過不足なく情報を網羅する状態を指します。
また、要素を整理する際には、So What?(つまり?)・Why So?(なぜ?)が役立ちます。自問自答を繰り返せば、要素間の関連性や因果関係が明らかになるからです。そのうえで、以下の順で整理すると、筋の通った表現になります。
- 論点、テーマ(述語+疑問形、~が必要か?)
- 事実
- 筋道(根拠)
- 主張・結論(だから~)
これらを意識して考えるようにしましょう。
ロジカルシンキングのメリットや重要性
ロジカルシンキングが業務において、なぜ必要とされるのでしょう。まずは、そのメリットを見ていきましょう。
1.論理的思考力が向上する
ロジカルシンキングを習得するメリットの一つに、論理的思考力の向上が挙げられます。物事が客観的に見られるようになり、問題を解決するまでの道筋が立てやすくなるからです。
フレームワークを使って問題の原因を明らかにできるようになるため、適切な解決策や判断を探すまでの時間が早まります。同時に、物事を順序立てて情報を整理し、意見を組み立てられるようになることで、筋道が通った、説得力のある提案が可能となるのです。
論理的思考力の向上は、「分析力」「問題解決力」「提案力」といった要素がいずれもアップします。また、意思決定のスピードも速くなり、仕事の効率化にもつながります。
2.コミュニケーション能力がアップできる
コミュニケーション能力がアップできるのも、ロジカルシンキングを習得するメリットの一つです。コミュニケーションの本質は「伝える力」と「聞く力」。いずれも、ロジカルシンキングで養われます。
自分の意見を論理的に構築できるようになり、相手に的確に伝えられる力が身に付きます。同時に、物事を整理したうえでポイントを捉えられるようになるので、相手の意見を理解できるようになります。
コミュニケーション能力がアップすると、煩雑な意見が飛び交う会議のような集団での話し合いも、円滑に進行が可能になります。必要な情報だけを取捨選択し、客観的にまとめられるようになるからです。
3.生産性が向上する
ロジカルシンキングが使えるようになると、生産性も向上します。個人の場合は、自ら仕事を検証できるようになり、ルーティンワークの効率アップにつながります。浮いた時間は新たな学びにあてられ、スキルアップが狙えます。
一方でチームとしても、一人ひとりの力量が上がれば、作業の効率化につながります。効率化が進めば、アイデアを考える時間が増え、新たなイノベーションにつながる可能性が生まれます。
変化の激しい時代を迎え、環境が変わっても成果を出せる能力「エンプロイアビリティ」が求められるようになりました。ロジカルシンキングは足元の生産性だけでなく、中長期的に評価され続ける「一生もののスキル」といえるでしょう。
具体的なロジカルシンキングの例|フレームワークの種類
ロジカルシンキングを具体的に見ていきましょう。フレームワークにはさまざまな種類がありますから、以下の中から代表的なものをピックアップし、詳しく説明していきます。
フレームワークで代表的な手法は以下のとおりです。
- ロジックツリー
- ピラミッドストラクチャー
- PDCA
- MECE
- SWOT(スウォット)分析
- マトリックス
- 3C分析
- 4P分析
- 5フォース(ファイブフォース)分析
- SCAMPER(スキャンパー)
- SMART(スマート)の法則
- STP(エスティーピー)分析
- パーセプションマップ
- バリューチェーン
- AARRR(アー)モデル
- 空・雨・傘
参考資料:株式会社日本能率協会マネジメントセンター|ロジカルシンキングのフレームワークを紹介!代表的な11の方法を解説
1.ロジックツリー
ロジックツリーは、問題や課題、命題を階層に分けて分析していく方法で、大元の問題から木の枝葉のように広がっていくことから名づけられました。それぞれの課題や命題から、How(どうやって)・Why(どうして)を掘り下げて分類していきます。根本的な問題点や改善点を掴みやすくなるのが特徴です。
たとえば、「人材を定着させたい」という課題の場合、「採用数を増やす」なら「母集団を増やす」「求人広告を出す」が考えられます。
また、「離職を減らす」なら、「オンボーディングの導入」「コミュニケーションの場を増やす」「メンター制度の導入」などに分類可能です。
情報を掘り下げて整理するのに有効なフレームワークです。
2.ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、結論を頂点にして、その根拠を積み重ねて結論を強固にする手法です。
問題の原因や手法を探るロジックツリーとは、似て非なるものです。ピラミッドストラクチャーは主張の根拠を掘り下げていくため、階層が下に行けば行くほど結論が強固になっていきます。
誰かを説得する際に有効で、営業のプレゼンテーションに利用されるケースが多いです。
たとえば「優秀な人材を増やすには中途採用が必要」と主張する場合、その下には「少子高齢化の進展で新卒採用しづらくなっている」「育成にかける経費軽減」「即戦力への期待」といった理由を挙げ、根拠を積み上げて説得力を持たせます。
3.PDCA
現状を改善し、目標達成する時に有効なフレームワークがPDCAです。
プロジェクトの進行時などにも利用され、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字どおりの順番で行動を積み重ね、改善につなげます。より良い成果を上げるには、一連のサイクルを素早く繰り返すのがコツです。
独自の社員評価制度を導入する場合、まず入念に制度設計をして、実行に移します。その後、評価について社員からヒアリングし、結果を分析。修正が必要な点を改善して再度実施することで、社員の評価を上げていくことが可能です。
会社のビジネスのみならず、さまざまな場面で活用しやすく、個人の業務でも取り入れられています。
ロジカルシンキングについてのまとめ
業務の課題や解決に重要なロジカルシンキングについて、詳しく説明しました。
まとめると、以下のとおりです。
- ロジカルシンキングとは、考え方やスキルのことをいう
- ロジカルシンキングは、いくつかの要素から構成されている
- ロジカルシンキングは、一定のルールに沿って整理することが重要である
- ロジカルシンキングを習得することにはメリットがある
- ロジカルシンキングのフレームワークには、課題の解決方法によりさまざまなものがある
ビジネススキルを用いた業務改善や生産性の向上には、たくさんのアプローチの仕方があるでしょう。ロジカルシンキングもその一つ。導入を考えている経営者や育成担当者には、ぜひ活用していただきたいスキルです。