チームビルディングとは?実施する目的・プロセス・具体例を紹介
チームビルディングは、共通の目標に向かって各自の能力や経験を最大限に活かすチームを作る取り組みです。高いパフォーマンスを発揮し、目標を達成するための方法として注目されていますが、どのように実施していけば良いのでしょうか。
今回は、チームビルディングの目的やプロセス、具体例について解説します。高い成果を出すチーム作りを行いたい方は、参考にしてください。
チームビルディングとは?
「チームビルディング」は英語の「team building」から来た言葉で、日本語で「チーム」を「構築する」という意味です。
「チーム」と同じように使われる「グループ」は単に人の集まりを指し、「チーム」は同じ目的のために作られたグループの一種であるという解釈が一般的です。
「チームビルディング」とは、メンバーが共通の目標に向かって各自の能力や経験を最大限に活かし、高いパフォーマンスを発揮できるチームを作ることを指します。
チームビルディングを実施する目的
チームビルディングを実施する目的にはどんなものがあるか、5つに分けて解説します。
1.チームメンバーの相互理解
組織のなかでは、入社2、3年目までの経験の浅い社員、ある程度の経験を持つ中堅社員、経験豊富な年配社員が同じチームのメンバーになることも珍しくありません。
世代だけでなく、仕事に対する価値観や実務的な経験値の異なるメンバー同士がどのような考え方の持ち主で、何を得意としているか、逆に苦手にしているかをお互いに理解し合うことは、チームビルディングを行う目的の1つです。
2.大きな目標達成の確率向上
会社が大きな目標を達成するためには、多大な時間と労力が必要です。一人の力はわずかであっても、多くの人の力が集まることで、大きな目標を達成できる確率は格段に上がります。
たとえば、担当者一人では準備から立ち上げまでの時間が長くかかる新規事業も、チームビルディングを実施することで、予測可能な時間軸のなかで目標達成を実現することが可能になります。
3.メンバー各自の能力に合った業務アサイン
組織にはさまざまな経験値やスキルを持った人がいます。チームビルディングを行うことによって、個々の能力や得意不得意の特長を把握しやすくなります。
たとえば、中途入社の社員の経験値やスキルは入社前の本人の説明だけでは把握することができません。その場合、チームビルディングの過程を通して能力を確認することで、安心して得意な業務をアサインすることができるでしょう。
4.メンバー同士の学び合いによるスキルアップ
チームのメンバーは、それぞれ能力や得意分野が異なります。個人が自分だけで業務に必要な技術や能力を向上させるのは難しいものです。
しかし、チームビルディングを通して、メンバー同士がそれぞれの得意分野を学び合うことができます。他のメンバーの得意な技術を学び、個人では習得が難しい技術やスキルを効率的かつ効果的に習得できることも、チームビルディングの目的の一つです。
5.チーム全体の生産性の向上
企業においては、目的に向かってチームビルディングを行うなかで、チーム全体の生産性の向上について常に意識しておく必要があります。
どのような組織でも、チームとして同じ目標に向かって活動するうえで、チームの生産性を無視して目標を達成することはできません。目標を達成するためには、個々の生産性向上は必須であり、それがチーム全体の生産性の向上につながります。
チームビルディングのプロセスとなる「タックマンモデル」
「タックマンモデル」とはチームビルディングのなかで、チームの状態を5段階に分けたモデルのことで、チームの現状と今後行うべきことを明確にするために役立ちます。
5段階のプロセスそれぞれについて解説します。
1.形成期
チームが形成されたばかりの初期の段階で、メンバー同士が互いに相手のことを良く知らず、チーム内の自分の立場や役割も明確ではない状態を指します。特に、チーム内に顔見知りがいない場合は、今後について各自が不安を感じている時期です。
この時期には、まずチームリーダーがチーム発足の経緯や達成目標を共有し、メンバー各自の役割や、チームとしてのコミュニケーション方法などを丁寧に説明する必要があるでしょう。
2.混乱期
チームの目標やメンバー個々の役割が明確にされていない段階では、メンバー構成によっては自己主張の強い人の行動が目立つようになります。ささいなコミュニケーションの行き違いや仕事の進め方の価値観の問題などが原因で、チーム内に衝突が発生しがちな時期です。
この時期、チームリーダーはチーム内に衝突が発生することを想定したうえで、メンバーには互いにリスペクトの姿勢を持つことの重要性を伝え、個々の考えを率直に言い合える環境を提供する必要があります。
3.統一期
チーム内の衝突が収まったあと、お互いの考え方や仕事に向かう姿勢などの相互理解が進んでいきます。メンバー各自の役割が明確になり、チームの目標に向かってメンバー同士の連携が動き出す段階です。
各メンバーの得意分野と能力が明確になってくるため、チームリーダーはチームメンバー全体の適材適所な配置のために、当初の役割分担を一度見直す必要があるでしょう。
4.機能期
各メンバーが自分の役割を明確に認識し、他のメンバーの役割と立場を尊重しながらチームとして効果的に機能している時期です。その証拠として、チームの目標に向かって確実に成果を出し始めていることが、外部からも判断できるようになります。
この時期には、チームリーダーはメンバーの動向を注意深く観察します。変化のサインがあれば早めにメンバーとコミュニケーションを取り、問題が大きくならないうちに対策を講じなければなりません。
5.散会期
チーム結成時に設定された目標が達成され、チームを解散するタイミングです。実際には、目標達成以外にも時間・予算の制約やリソース的な制約、会社の事業方針の変更など、チーム解散の理由はさまざまです。
チームリーダーはこの時期に、チームビルディングを通してどのような成果と課題を得たかについて、振り返りを行います。
チームビルディングを成功させるための、3つのポイント
ここからは、チームビルディングを成功させるための3つのポイントについて解説します。
目標・方向性の設定する
チームの目標や方向性を設定しないままでは、メンバーがそれぞれの独自の解釈で業務に取り組んでしまう恐れがあります。
早い段階でチームで話し合いを行い、共通の認識を持つことができれば、確実な目標達成に近づきます。可能な限り、具体的で測定可能な目標や方向性を設定するようにしてください。
曖昧な目標や第三者に強制された目標では、メンバーの結束に至らず、モチベーションも上がりません。
メンバーの役割を明確にする
チームビルディングの成功には、各メンバーがそれぞれの能力を最大限に発揮する必要があります。そのためには、個々の能力を正しく把握したうえで、それぞれの役割を明確に定義することが重要です。
各メンバーの役割を決める際は、本人の希望や意欲をヒアリングしたうえで、他のメンバーの役割との関係性を考慮して決定しましょう。
これは、最終的に希望どおりに行かない場合も、モチベーションの観点から大切になります。
コミュニケーションが円滑に取れる環境を作る
チームの目標達成には、メンバー同士がいつでも必要な時に、効率的かつ効果的な方法でコミュニケーションが取れる環境も必須です。
たとえば、前述の「混乱期」で意見の食い違いが生じた時、お互いがストレスなく対話できる環境作りが欠かせません。メンバー同士が意見を率直に言い合い、解決策を見出していけるかどうかが、その先のチームビルディングのプロセスのすべてに影響を及ぼします。
チームビルディングの具体例を紹介
チームビルディングはチームの状態や目標に合わせて、さまざまな手法が存在します。いくつか、具体例を紹介していきましょう。
ダイアログ(対話)
メンバー同士お互いを良く知るために、まずは個々の価値観、仕事観、人生観などが分かるようなテーマについて対話をすることが基本です。組織のなかの上下関係にとらわれず、率直な気持ちを伝え合うことを心がけます。
また、できるだけ各自が全チームメンバーに対してそれぞれ対話するようにしましょう。その後のチームビルディングでも違和感なくメンバー同士が対話を行えるようになり、チーム内のコミュニケーションが円滑になります。
アクティビティ
チームの連帯感を育てるために、メンバー全員でコミュニケーションを取りながら体を動かし、何かを完成させるワークに協力して取り組む手法です。
アクティビティの内容によって、メンバー各自が異なる役割を担当してワークを完成させることもあるため、実際の組織の課題に取り組むチームとしての行動を疑似的かつ部分的に経験することができます。各メンバーの得意分野や、適した役割を知る機会としても有用です。
ゲーム
チームに課された目標達成のための行動に近い経験ができるような要素を織り交ぜた、ゲームを行う手法です。チームメンバー各自が、本番の仕事環境をシミュレーションしたゲームのなかで、それぞれの役割を演じながら、ミッションを一つひとつクリアしていきます。
ゲームのなかで、実際の仕事を進める際の業務上の課題や心理状態を疑似経験することができ、本番で慌てず行動できる力を養うことができます。
チームビルディングについてのまとめ
チームビルディングによって、組織のなかに各自の能力や経験を最大限に活かし、高いパフォーマンスを発揮できるチームを作ることができます。
チームビルディングを成功させるためには、チームの状態に合わせた手法を取ることが大切です。
「タックマンモデル」の5段階のプロセスを参考にしながら、組織の大きな目標達成のためのチーム作りに取り組んでみてはいかがでしょうか。