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中小企業のための「介護離職防止」対策! 第21回 介護施設を「選択する」タイミング

~企業は「人」がいるから売上がある!をサポート~

著者:一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事  石間 洋美

中小企業のための「介護離職防止」対策! 第21回 介護施設を「選択する」タイミング

介護が始まると、まず初めに「在宅介護」と「施設介護」を選択することになります。

今後の生活の場をどこにするのかということです。

「在宅介護」を選択した場合、最期まで在宅で介護しますか?介護に疲れても「決めたからにはやり通すことが自分の務め」「介護施設に入居させることはかわいそう」などと思うことありませんか?

この気持ちに固執していると、疲弊してしまう可能性が高くなります。

今回は、生活の場を在宅から介護施設へ切り替えるタイミングをお伝えします。


施設介護への切り替え

前回は、介護施設の選び方についてお伝えしました。

昨今は介護施設の種類も増え、介護施設ごとに特色のあるサービス提供を行い、お客様に満足いただけるよう生活の充実を図ろうとする施設が増えています。

お客様からすると選ぶ施設が豊富にあることは有難いことですが、たくさんある施設の中から大切な方の「最適な場所」を選ぶとなると難しくなることもあるでしょう。

そんなときには、ぜひ前回の「施設を選ぶポイント」をご参考にしていただければと思います。

では、そもそもどのようなタイミングで生活の場を自宅から介護施設へ切り替えるのでしょうか。

病気や怪我、あるいは老化や認知症状の出現から介護のある生活が始まり、

「家族が自宅で介護することが当たり前」

「子供が親の面倒を看ることが当たり前」

「一人っ子だから自分が介護するしかない」

「自分で介護すると決めたからにはやり通すことが自分の務め」

「親を施設に預けるなんて・・・」

などのような気持ちを抱き、生活の場を介護施設へ切り替えるタイミングを掴めない方も少なくありません。

中には経済的な理由で介護施設への入居を選択できない方もいます。

高齢になるほど身体の自由が利かず身体的機能は衰えていく可能性が高いため、サポート(介助)の回数が増え、介護者の肉体的負担は増していきます。

また、その状態が長期化すると介護者の肉体的負担や精神的負担は増え、ストレスが蓄積し介護うつや介護虐待、さらには介護殺人などを引き起こしてしまう可能性も高まります。

近年このような悲しいニュースを見る方も多いと思います。

一人で抱えてしまうと、いずれ限界がやってきます。自宅で介護をすることは素晴らしいことですが、限界が来る前に生活の場を介護施設へ切り替えることも非常に大切なことなのです。


介護施設入所のタイミング

生活の場を自宅から介護施設へ切り替えるタイミングとして、3つの段階があります。

1 要介護度が上がり、肉体的な負担が増えたとき

要介護度が上がると、家族がサポートする量が増え、肉体的負担が増えることになります。

肉体負担が増えることにより介護疲れが蓄積され、介護したい気持ちがあっても介護者の体力が限界にきてしまいます。

現在は介護者の介護疲れを軽減するために、介護者に休む時間を取っていただく「レスパイトケア」「レスパイト入院」という体制もできています。

体力の限界を感じたときに生活の場を自宅から介護施設へ切り替える一つのタイミングとなります。

2 病院退院後などに、昼間も介護が必要な状態になったとき、且つ昼間は仕事で介護が難しい状況となったとき

病気や怪我がきっかけで介護の生活が始まる場合もあります。

退院する際、入院前の身体状態で自宅に戻れるとは限らず、介護が必要な状態で自宅に戻る場合も少なくありません。

病院では退院する際にリハビリが必要と判断されれば自宅に戻る前の中間施設として存在する介護老人保健施設やリハビリテーション病院に転院し、リハビリを受けることが可能となります。

ただし、介護老人保健施設の入所期間は原則半年とされています。その後医療処置の必要性がないと判定されると退所を勧められます。

退所後、昼間も常時介護が必要な状態、且つ家族が介護できる状態になかった場合には自宅に戻ることは難しくなります。

このような場合にも、生活の場を自宅から介護施設へ切り替える一つのタイミングとなります。

3 認知症状が進行したとき

認知症状が進行すると、何度も同じことを聞いてくることや急に怒り出すこと、突然泣き出すことなど感情の起伏も激しくなり、それに対応する家族は精神的負担が大きくなってきます。

また認知症の場合は、ウロウロ歩き回る「徘徊」といった症状や、昼間ウトウト寝てしまい夜になって活動的になる「昼夜逆転」といった症状が出る場合もあります。

特に昼間仕事をしている家族は、夜も眠れずに介護するとなると肉体的にも負担が大きくなります。

このような場合にも、生活の場を自宅から介護施設へ切り替える一つのタイミングとなります。


介護施設を考え始める時期

介護施設に入居されている大半の方は「なるべくなら介護施設に入りたくない。できるだけ自宅で生活したい」と思っています。

きっとあなたの身近な大切な方も、このような気持ちを持たれているかもしれません。

そして、そんな気持ちを察し寄り添おうとすることもあり、生活の場を自宅から介護施設へ切り替えるタイミングを逃してしまう方も多いように感じます。

また、育ててもらった恩や、優しい子供だと思われたいという気持ちもどこかにあるのではないでしょうか。

しかし介護施設への入居は、

  • 介護が始まったらなるべく早めに考えておくこと
  • 介護施設の目星をつけておくこと
  • 出来るだけ健康なうちに話し合い進めること

が大きなポイントとなります。

介護が始まり身体症状や認知症状の進行するスピードが早い場合には、様々な介護サービスが必要となります。そうなると、介護施設の入居が決まるまで介護をする家族は肉体的、精神的な負担も続きます。

さらにもし介護離職してしまうと、収入が減り、経済的な負担も大きくなり、希望する介護施設へなかなか入居できない可能性も出てくるのです。

このような理由からも、介護離職はお勧めしません。辞めることなく、働きながら介護をする可能性を追いかけることが重要となります。

また、介護される方の心身状態だけでなく、介護者自身の心身状況や生活状況はいつ変化するかわかりません。

様々な感情や気持ちが出てくると思いますが、自分の考えに固執せず状況に合わせた選択や、「できることをやろう」という柔軟な気持ちを持つことも大切です。

介護者自身が疲弊しない、ご自身の生活を守るための選択としても、生活の場を自宅から介護施設へ切り替えるタイミングを逃さないようにしていただければ幸いです。

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著者プロフィール

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石間 洋美

一般社団法人 日本顧問介護士協会 代表理事

子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という想いを強く持っていて、高校生活のボランティア活動で福祉・介護の世界と出会う。福祉・介護に関わる仕事を目指したく、静岡福祉医療専門学校医療福祉情報科へ入学。卒業後は、介護施設にて様々な経験をする。その後、自身のスキルアップのために介護事務業務、相談業務、マネジメント業務、管理業務を行う。医療福祉接遇インストラクターの資格も取得し、お客様満足度向上のための研修講師も務める。介護の業界に携わり「誰にでも介護はある日突然やってくる」現実を目の当たりにしたとき、もっと多くの方の救いや力になりたいという想いがさらに強くなり、その想いを実現すべく、2020年4月に当協会を立ち上げ、現在は「介護で困る人と困る量を圧倒的に少なくする!」を目標に掲げ活動している。

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