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試用期間における雇用契約書とは? よくあるトラブルと対処法

監修者: 社会保険労務士 行政書士  小島 章彦

試用期間における雇用契約書とは? よくあるトラブルと対処法

本採用を行う前に試用期間を設ける企業が多くなりました。

試用期間中にも雇用契約書を書面で通知する必要がありますが、契約書の不備によってトラブルになるケースも少なくありません。

今回は、試用期間中における雇用契約書の注意点について解説します。

従業員とのよくあるトラブルや対処法も紹介していますので、雇用契約に携わる人事担当者の方はぜひ参考にしてください。


試用期間中の雇用契約書の有無

まずは、試用期間とは何かと、試用契約書中に雇用契約書が必要になるかどうかについて解説します。

試用期間とは?

試用期間とは、企業が新たな労働者を雇用する際、本採用の前に社員として適正かどうかを判断する期間のことです。

採用前の履歴書や職務経歴書と面接だけでは、人物や能力、勤務態度などを正しく判断することが難しいため、試用期間を設定する企業が多くなりました。

一方、研修期間とは、入社後に業務に必要なスキルや知識、技術に加えて、企業の社風や方針を習得するための研修が行われる期間のことです。

社内や社外講師による研修や実際に業務を行いながらスキルや知識、技術を習得する研修があります。

試用期間中に関係なく契約書は結ぶべき

労働基準法の第15条に基づき、企業は労働者を雇用する時に「労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件などの明示」が義務付けられています。

労働契約の期間、就業場所、始業終業時刻、賃金、退職に関する事項は、絶対的明示事項として書面により必ず明示しなければなりません。

そのため、試用期間中であっても、雇用契約書や労働条件通知書などの書面による通知はしておく必要があります。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索


試用期間での雇用契約書を結ぶ際の注意点

ここからは、試用期間において雇用契約書を結ぶ際の注意点を3つ紹介します。

1.試用期間中に記載すべき情報(試用期間の長さ)

労働基準法には、試用期間を設定する場合の長さについては特に定められておらず、企業が自由に決めることができます。

ただし、試用期間は1カ月から6カ月の間で設定している企業が一般的です。それ以上の期間にすることは、賃金などで労働者を不安定にさせるため、好ましくないとされています。

また、試用期間の延長は、就業規則などに詳細が明示されていない限り、原則として認められていないので注意が必要です。

2.試用期間中に記載すべき情報(賃金)

試用期間中の労働者への賃金は、本採用期間よりも低く設定することが可能です。

ただし、雇用契約書や就業規則などに規定していなければなりません。

また、試用期間中の労働者への賃金は、基本的には最低賃金を下回る金額を定めてはいけないことに注意しましょう。

3.本採用に至る条件

労働契約第16条では、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者を辞めさせることはできない」と定められています。

試用期間中も例外ではなく、企業は自由に労働者を解雇することはできません。

以下のような社会通念上相当と認められるような理由で本採用を行わない場合は、雇用契約書や就業規則などに条件を明記しなければなりません。

  • 勤務態度に問題があり、注意されても改善しない
  • 業務命令や職務規律に違反をする
  • 無断遅刻や無断欠勤を繰り返す
  • 履歴書や職務経歴書に重大な虚偽があった

試用期間のトラブルと対処法

試用期間中のトラブルは少なくありません。

ここからは、雇用契約書に明記しなかったことに起こるトラブルについて解説します。

1.試用期間の延長に関するトラブル

試用期間を設定した場合に、少々の問題はあるが解雇するまでに至らないケースもあるでしょう。

この場合、本採用するかどうか判断する時間が欲しいあまり、労働者の同意なしに一方的に試用期間を延長し、トラブルになるケースが多くあります。

試用期間の延長は、就業規則などに延長の可能性があることや期間が明示されていない限り、原則として認められていません。

また、試用期間の延長は労働契約の変更になるため、労働者の同意なしに一方的に行うことはできません。

トラブルを回避するためには、就業規則などに試用期間の延長の理由や期間を記載しておくことや労働者の同意を得ることが必要です。

2.雇用主側が都合で本採用を拒否するケース

試用期間は、その後の本採用を前提としています。

雇用主側の都合によって本採用を拒否すれば、トラブルが発生する可能性が高くなります。

たとえ、試用期間中であったとしても、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、雇用主側だけの都合で本採用を拒否することはできません。

その権利を濫用したものとして無効とされます。

3.保険加入手続きを失念してしまう

健康保険や厚生年金保険などの社会保険の適用事業所で働く労働者は、社会保険の加入対象者になります。

パートタイム労働者であっても、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常労働者の4分の3以上になった場合は、社会保険に加入しなければなりません。

また、4分の3未満の短時間労働者であっても、一定の要件を満たした場合は加入の対象です。

試用期間中の労働者も上記の要件を満たした場合は、入社日から社会保険に加入する必要があります。

雇用主が手続きを失念した場合はトラブルになる可能性があるため、注意しましょう。


試用期間の契約書はテンプレートを活用しよう

試用期間中の契約書は法律に沿った内容で作成しなければなりません。

そのため、一から作成するのではなく、テンプレートを自社用にアレンジして活用したほうが業務が効率化できます。

ビズオーシャンでは、雇用業務に関わる人事担当者の方向けに、試用期間にまつわる契約書のテンプレートを無料で配布しております。

試用期間の契約書作成をスムーズに進めるために役立つテンプレートとなりますので、気になった方は下記のリンクからダウンロードしてください。

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試用期間中の雇用契約書についてのまとめ

試用期間とは、企業が新たな労働者を雇用する際に本採用するかどうかを判断する期間のことです。

試用期間中であっても、法律によって雇用契約書などでの労働条件の通知が義務付けられており、不当な解雇は認められていません。

企業の試用期間の労働者に対する知識が不足していたことによって、トラブルになるケースも増えています。

法律に則った契約を結び、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。

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監修者プロフィール

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小島 章彦

社会保険労務士 行政書士

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。

現在は、某システム開発会社に勤務。

会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを約5年行っている。

執筆実績:

「マネーの達人」というサイトで180以上の執筆を行っている。

その他、社会保険労務士事務所、法律事務所のコラム等の執筆等多数。

他にも行政書士の資格も保有。

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