このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、対応ブラウザでご覧下さい。

ケイパビリティとは? ビジネスへの活用方法や重要性を解説

ケイパビリティとは? ビジネスへの活用方法や重要性を解説

ケイパビリティは、経営戦略を立てるために重要な概念です。競合他社よりも優位に立っている能力や強みを意味しますが、どのように分析して、役立てていけばよいのでしょうか。

今回はケイパビリティについて、メリットや高める方法を解説します。組織のケイパビリティを分析し、経営戦略に用いるために、ぜひ参考にしてください。


この記事の監修者
サプナ社会保険労務士法人代表 一般社団法人組織と個人の在り方研究会代表理事  特定社会保険労務士 

ケイパビリティとは?

まずは、ケイパビリティとは何か、その定義について解説します。

ケイパビリティの意味

ケイパビリティとは、「才能、能力、機能や性能、手腕、可能性」といった意味の英語です。経済学用語では、企業全体や組織として持つ他社よりも優位な能力・強みを指し、経営戦略上の重要な概念と考えられています。

1992年にジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス・シュルマンによる論文で提唱され、「バリューチェーン全体を通しての組織の遂行力」と定義されました。

つまり、製品や技術などの単一の強みではなく、事業全体を通したプロセスにおける能力・強みです。

ビジネスの観点でのケイパビリティの意味

経営戦略論における「企業の強み」を指す代表的な言葉に「コアコンピタンス」があります。G・ハメルとC・K・プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)では、「顧客に特定の利益を与える一連のスキルや技術」と定義されています。つまり、「他社に真似できない核となる能力」のことです。

ケイパビリティもコアコンピタンスも、他社と比較した時の強みや優位性を指す点で似た意味を持つ言葉ですが、フォーカスする点が異なっています。

コアコンピタンスが「技術」にフォーカスしているのに対し、ケイパビリティは「事業プロセス全体や組織全体」にフォーカスしています。どちらも経営戦略においては重要な要素です。

ケイパビリティは2つに分類される

カリフォルニア大学バークレー校のデイヴィッド・J・ティース氏は戦略経営論の中で、ケイパビリティをオーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)とダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)の2つに分類しています。

なお、日本では「ものづくり白書2020」において、「不確実性が著しく高まっている世界で、日本の製造業はどう進むべきか」を考えるに当たり、ダイナミック・ケイパビリティが注目すべき戦略経営論として説明されました。

オーディナリー・ケイパビリティとは、今ある経営資源をより効率的に利用して、利益を最大化しようとする能力のことです。労働生産性や在庫回転率のように、特定の作業要件に関して測定でき、ベスト・プラクティスとしてベンチマーク化され得るもの。いわば「ものごとを正しく行うこと」とされています。

しかし、企業を取り巻く環境や状況の変化に対応できなければ、企業成長はありません。そこで重視されるのが、ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)を高めることです。

現状の企業行動が、環境や状況の変化に適合しているかどうかを常に批判的に感知し、適合しなくなったと判断したならば、適合するように企業を変革することが求められます。

オーディナリー・ケイパビリティが「ものごとを正しく行うこと」であるなら、ダイナミック・ケイパビリティは「正しいことを行うこと」です。

そして、ティース氏は「正しいことを行うこと」ために必要な能力をさらに3つに分類しています。

  • 感知(センシング)
    脅威や危機を感知する能力
  • 捕捉(シージング)
    機会を捉え、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力
  • 変容(トランスフォーミング)
    競争力を持続的なものにするために、組織全体を刷新し、変容する能力

引用:「ものづくり白書2020」|経済産業省

今後は「危機を感知し、適切なタイミングで組織を再編成して、新たな組織への変容を実現できる企業」に変わる必要があります。


ケイパビリティを用いた戦略

組織内部の強みを生かして優位に立つ戦略は、「ケイパビリティ・ベース戦略」と呼ばれています。この戦略は4つの基本原則から成り立っていますので、それぞれについて解説します。

1.ビジネスプロセスの重視

製品や市場性といった外的要因に着目するのではなく、組織体制や価値実現のためのビジネスプロセスなど、内的要因に着目するという原則です。

2.主要なビジネスプロセスをケイパビリティに転換

新たに作るのではなく、すでにある自社の主要なビジネスプロセスを戦略的にケイパビリティに転換させます。

3.部門間を結ぶインフラを整備

「バリューチェーン全体を通しての組織の遂行力」のために、部門間(各機能)を結ぶインフラを強化し、各部門の力を最大限に発揮できる環境を整えます。

4.経営トップがケイパビリティ戦略を推進

各部門をつなぎ、バリューンチェーン全体、組織全体の能力を優位にするためには、経営のトップが推進しなければならないという原則を意味します。


ケイパビリティを高めるためには組織分析が重要

自社の主要なビジネスプロセスを、戦略的にケイパビリティに転換させるためにも、部門間の力を最大限に発揮させるためにも、まずは現状の分析が必要です。

バリューチェーン全体、組織を客観的に把握することで、何をどう変えていくべきなのかが見えてきます。分析方法には以下の2つの方法があります。

  1. バリューチェーンを洗い出す方法
  2. SWOT分析

バリューチェーンを洗い出す方法では、製品やサービスが顧客に提供されるまでの一連の企業活動を価値の連鎖として捉えます。そのバリーチェーンの中で競合他社と比較してどの部分に強み・弱みがあるのか、付加価値があるのかを分析します。

組織全体の分析なので、人事、労務管理、人材開発、組織管理など、事業活動以外の管理や支援部門における強み・弱みを書き出してみましょう。

また、SWOT分析とは、よくマーケティングで活用されるフレームワークです。

内部環境と外部環境について、プラス面・マイナス面をそれぞれ分析することで、事業の強み・弱みを相対的に把握できます。自社の強みや市場における優位ポイントが明らかになり、顧客や市場、社会で評価されるケイパビリティを発見できるでしょう。


ケイパビリティを高める方法

ここまでは自社のケイパビリティが何か、分析する方法について解説してきました。ここからは、判明したケイパビリティをより高める方法について解説します。

会社のケイパビリティを明文化

ケイパビリティは「事業プロセス全体や組織全体」の強み、他社と比較した際の優位性です。組織を構成するメンバーに明文化して伝えることで、自分事として取り組むことができます。

多様な人材の確保

組織を変革していくためには、未来に向かって「正しいことは何か」を考える人材が必要です。多様な属性・感性・技術・能力を持った人材を確保し、組織内に客観的な視点が組み込まれるようにします。

人材育成

組織分析を基に何をケイパビリティにしていくのか決めた後で、その内容に合わせた人材育成を行います。ダイナミック・ケイパビリティを高めるためには、組織のメンバーの質が重要です。


ケイパビリティを高めるメリット

ここからは、ケイパビリティを高めることで企業にもたらされるメリットについて解説します。

競合との差別化

ケイパビリティは事業プロセス全体、組織としての強み、まさに「組織力」です。製品やサービス単体での競争ではないので、簡単に模倣されない(模倣できない)他社との差別化ポイントとなります。

組織文化の醸成、改革

ケイパビリティをしっかりと文化として根付かせることで、より戦略に注力できる基盤ができあがります。エンゲージメントの高い社員、ケイパビリティの明確な組織は、環境に合わせて変革していくことができるでしょう。

持続性の強化

確立したケイパビリティは、持続的に価値を生み出す装置のようなものです。定期的にメンテナンスを行って良い状態で稼働し続けることで、他の事業に応用できるなどの大きな価値が生まれ、持続的な経営も盤石になります。


ケイパビリティについてのまとめ

ケイパビリティは、企業全体や組織として持つ他社よりも優位な能力・強みを意味します。客観的な分析によって把握したケイパビリティを活かすことで、競合他社に優位に立つ経営戦略を立てることができます。

自社のケイパビリティは社員に明文化して伝え、それに合わせた人材を採用することで、さらに高めることもできます。他社の真似できない強みを強化するためにも、ケイパビリティを活用していってください。

この記事に関連する最新記事

おすすめ書式テンプレート

書式テンプレートをもっと見る

監修者プロフィール

author_item{name}

三浦 睦子

サプナ社会保険労務士法人代表 一般社団法人組織と個人の在り方研究会代表理事 特定社会保険労務士

大手不動産デベロッパーの本部スタッフとして組織人事や営業支援に関わる。

高校教諭を経て人材派遣会社の教育トレーナーに転職。

500名規模の正社員・契約社員の採用から育成、評価制度、昇給昇格制度を構築する。

2011年に独立し、社会保険労務士として雇用の専門家としてコンプライアンスを踏まえた

やりがいのある組織作りのために日々活動している。

当事者意識・気づき重視のため、体験型プログラムを中心に開催している。

育児・介護・治療との両立、若手や女性の活躍、シニアの再雇用など、その会社ごとの

「より良い働き方」とは何かを経営者とともに考えて支援している。

この監修者の他の記事(全て見る

bizoceanジャーナルトップページ