離職率の現状は? 日本企業における平均や離職率が高い会社の特徴を把握しよう
離職率を高めないことは、人的資源を確保するうえでも企業にとって大きな課題と言えるでしょう。
従業員の離職率を上げないためには、離職率の平均や離職が多い会社の特徴を知ったうえで、適切な対策を取ることが大切です。
この記事では、自社の離職率を分析したい経営層に向けて、離職率の計算方法や日本企業における離職率の現状、離職率の高い会社の特徴などをまとめました。
また、この記事の後半部分では、離職率を上げないための改善策を解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
離職率とは
離職率とは、従業員が職場を離れる割合を示す指標のことです。企業の働きやすさや人材の流動性を判断する際に重要な要素と言えます。
ここでは、離職率の算出の仕方や、考え方のコツを見ていきましょう。
離職率の計算方法
離職率の一般的な求め方は「離職者数をある地点の常用労働者数で割り、100%掛ける」という方法です。厚生労働省の雇用動向調査で使われています。
例えば、離職者数20人を常用労働者数100人で割り、100%を乗じると離職率は20%です。
一般的には、離職率が30%を超える企業は離職率が高いとされています。ただし、離職率の計算方法や調査期間は法律で定義されていないため、調査機関によって異なる場合があります。
離職率の考え方
離職率の数値だけでは、企業の良し悪しは正確に評価できません。
例えば、離職率が高い企業でも新しい人材が次々と入社し、新たな発想やスキルで企業が活性化されていく場合があるからです。逆に離職率が低い企業では、同じような意見やスキルしか持たない従業員が長く在籍し、企業が停滞するケースもあるでしょう。
離職率はあくまで企業の働きやすさを判断するための指標の1つですので、良し悪しを決めるには評判や労働環境など、さまざまな要素を総合的に考慮していく必要があります。
日本企業における離職率の現状
日本企業における離職率の現状について解説します。平均値や新卒者の3年以内の離職率を中心に見ていきましょう。
離職率の平均
日本の企業の離職率の平均は13.9%です。事業年度の開始時に勤務していた従業員が、年度内に退職した割合を示しています。
ただし、離職率の平均は業界や企業規模によっても大きく異なります。
例えば、接客業や営業職は自然と離職率が高くなる傾向がある一方、公務員や研究職は離職率が低いとされています。また、大企業と中小企業では、福利厚生や待遇の違いから離職率に差が出るでしょう。
日本の企業の離職率の平均は一定の指標となりますが、業界や企業規模によって差があるため、自社の離職率を評価する際には、同業界・同規模の企業と比較するのが適切です。
(出典:厚生労働省 令和3年雇用動向調査結果の概要 入職と離職の推移)
新卒者の3年以内の離職率
2019年3月に卒業した新規学卒就職者の3年以内の離職率は、新規高卒就職者が35.9%(前年度と比較して1.0ポイント低下)、新規大学卒が31.5%(同0.3ポイント上昇)です。
また、2019年の新入社員の離職率は次の通りです。新入社員の離職率はここ数年で30%前後を推移しています。
- 全体:約30%
- 大学卒:31.5%
- 短大卒:41.9%
- 高校卒:35.9%
- 中学校卒:57.8%
(出典:新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者))
離職率が高い企業のデメリット
離職率が高い企業のデメリットを4つ紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
採用・教育コストが増加する
離職率が高いと退職者の穴埋めで新たな採用が必要になるため、採用活動に伴う費用や、新人教育にかかるコストが繰り返し発生し、企業に負担がかかります。
費用だけではなく、雇用するたびに行う事務手続きや、度重なる採用活動で効率低下などの面においても、企業にはさまざまなコストが発生します。
企業にノウハウが蓄積されない
離職率が高い企業では従業員の定着が難しく、経験や知識が蓄積される前に退職するケースが多くなるでしょう。その結果、企業内でのノウハウや経験の伝承が困難になり、業務効率や品質の向上が遅れることがあります。
また、ノウハウが蓄積されないことで、新人教育の質が低下し、新入社員が十分な指導を受けられない可能性もあります。
企業イメージが低下する
求職者は離職率が高い企業を避ける傾向があるため、離職率の高い企業は採用活動において悪影響が及びます。また、従業員が短期間で退職することで、企業のイメージに対してマイナスの印象が広がり、ビジネス上の信用や評価が低下する可能性があります。
既存従業員の負担が増える
高い離職率が続く企業は退職者の業務が残り、それを引き継ぐ従業員の負担が増えます。その結果、従業員のストレスが高まり、労働環境が悪化するケースがあるでしょう。
従業員の負担が増加すると職場の雰囲気やチームの士気が悪くなるため、長期的な従業員のモチベーションの低下や非効率的な業務につながることがあります。
離職率が高い企業に当てはまる5つの特徴
離職率が高い企業には何らかの特徴があります。具体的に当てはまる特徴を5つ解説します。
時間外労働が常態化している
時間外労働が多い企業で働き続けたいと思う従業員は基本的にいませんので、時間外労働が多い企業は離職率が高くなる傾向にあります。
業務量が多い状況が継続的に発生している場合や、時間外労働が当たり前の風潮が定着している企業では、従業員にストレスや疲労がたまるでしょう。
公正な評価や昇進のプロセスが欠けている
人事評価制度は、目標が達成された従業員が正当に評価され、それに見合った待遇が反映される仕組みでなければなりません。
目標が明確でない制度や、評価が待遇に反映されない制度では、従業員のモチベーション低下を招き、離職率増加につながる恐れがあります。
また、人事評価制度自体がない企業も一部ありますが、その場合は、従業員に人事制度がない理由と昇進プロセスを明確にし、従業員が納得できる制度を構築することが大切です。
ベースアップが期待できない
物価や社会保険料が上昇している現代において、給与の上がらない企業で働き続けたいと思う人は少ないはずです。
企業経営が軌道に乗らない状況で、ベースアップを図るのは大きな決断が必要ですが、給与が上がらない企業では、今後の生活不安から従業員の離職が増加することが予想されます。
柔軟な働き方ができない
近年、テレワークや時差出勤などの柔軟な働き方が広まり、その取り組みを進める企業が増加しています。
一方、柔軟な働き方を導入できない企業では、子育て世代や親の介護をする従業員など、柔軟な働き方を求める人材の離職率が高くなる可能性があるでしょう。
環境の変化に遅れて事業が衰退している
急速な技術発展に比例して環境も変化する現代において、環境を変えずに事業が衰退している企業は、従業員の離職率が高くなる傾向があります。
特に若年層では仕事のやりがいや自己成長など、内面的な要素を重視して企業を選ぶ割合が高く、安定よりも成長を優先する傾向にあります。事業に固定的で変化が見られない場合、離職率の増加につながる可能性があるでしょう。
離職率改善に向けてできること5選
離職率改善に向けてできることを5つにまとめました。ぜひ参考にしてください。
従業員の待遇を見直す
まずは、給与や福利厚生などの待遇面を改善して、離職率を下げるのが大きなポイントです。業界の給与水準や同業他社と比較し、自社の待遇が低ければ見直しを検討するのがおすすめです。
また、物価の上昇や社会情勢の変化などの状況に応じて、給与や福利厚生のベースアップを検討し、従業員の生活水準を一定に保つことも大切です。
柔軟性な働き方ができる環境を整える
離職率を低下させるためには、従業員のワークライフバランスを実現し、柔軟な働き方ができる環境を整えることが重要です。仕事のための人生ではなく、仕事を人生の一部として捉える人が多いためです。
例えば、テレワークやフレックスタイム制の導入が挙げられます。さらに、従業員が育児や介護をしやすくするために、勤務制度や休暇制度の整備も効果的です。こうした施策によって従業員の満足度が向上し、離職率の低下が期待できるでしょう。
若い世代にキャリアアップの機会を提供する
現代では転職が当たり前となり、年功序列や終身雇用を前提とした仕組みは、若い世代に受け入れられない可能性があります。スキルや経験値を上げてキャリアアップなどを狙う、若い世代が多いためです。
優秀な人材にはキャリアアップの機会を早期提供し、成長できる環境を整えることが、離職率の低下につながるでしょう。
評価制度の見直し
評価制度が適切に設計されている場合、従業員は自分の目標に向かって働けるため、達成した成果が報酬や昇進に結びつくでしょう。その結果、従業員のモチベーションが高まり、離職率の低下が期待できます。
適切な評価基準や報酬制度がなされているか、フィードバックによって従業員に優れた点や改善点を示しているかなど、現状を把握して従業員の納得を得られる制度を構築するとよいでしょう。
従業員満足度調査
従業員満足度調査では、従業員が企業にどの程度満足しているかを調べます。具体的には次のような項目が対象です。
- 労働条件
- 賃金
- 職場環境
- 福利厚生
もし、従業員の不満足度が高い場合は離職率の上昇や、モチベーションの低下などのリスクが考えられます。調査結果を分析し、従業員の不満要素を改善することで、離職率低下につながるでしょう。
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離職率についてのまとめ
離職率は明確な基準値や絶対値が用意されていないため、企業の規模や算出の目的などによって差が生じるでしょう。
自社の離職状況や離職率はどれくらいかを把握したうえで、この記事の内容を参考にしながら、離職率の低下につながる施策を講じていきましょう。
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