【2022年度版】年末調整について“これだけは”知っておこう
毎年やらなければならない年末調整。作業として行ってはいつつも、その目的と正確な意味合いはご存知でしょうか?
そこで本コラムでは、2022年度版の年末調整について解説していきます。
そもそも年末調整とはどういうものか、事前に何を準備するべきかについて理解しましょう。
1.年末調整とは所得税の差額を清算する手続き
年末調整は、役員または使用人に対して毎月支払われている給与等から源泉徴収されている所得税および復興特別所得税の合計額と、その人が1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税額との差額を精算する手続きです。
この年末調整の対象となる人は、年末調整を行う日までに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している一定の人です。
年末調整の対象となる人は、一般的な12月に行う場合と年の中途で行う場合がありますが、今回は12月に行う場合を説明いたします。
2.年末調整の対象になるにはどんな人?
12月に行う年末調整の対象となる人は、会社などに1年を通じて勤務している人や年の中途で就職し年末まで勤務している人(青色事業専従者も含む)です。
ただし、次の2つのいずれかに当てはまる人は除かれます。
- 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が、2,000万円を超える人
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について、徴収猶予や還付を受けた人
3.年末調整の対象となる所得控除は何か
年末調整の対象となる所得控除と、対象とならない所得控除があります。
対象とならない所得控除に関しては、確定申告を行うことにより、所得控除を受けることになります。
年末調整の対象となる所得控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 社会保険料控除
- 障害者控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
年末調整の対象とならない所得控除
- 寄附金控除
- 医療費控除
- 雑損控除
4.年末調整だけでなく、確定申告も必要になるのはどんな人?
ほとんどの給与所得者は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますので、確定申告の必要はありません。
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人は、原則として確定申告をしなければなりません。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
- 2か所以上から給与の支払いを受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
(注)給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はない。 - 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により、源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から、給与等の支払いを受けている人
- 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
5.年末調整の際に提出が必要となる「4つ」の申告書
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ、初年度の住宅借入金等控除の適用を受けるときは確定申告が必要になります)
他にも、各種保険料の控除証明書や非居住者の親族に関する証明書など、必要に応じて申告内容を証明する書類の添付が必要になります。
6.年末調整の前に準備や確認をすべきポイントは?
①各種保険料の控除証明書があるか
各種保険料の控除証明書は、早ければ9月の下旬より証明書が届くところがあります。
年末調整の書類を会社へ提出するまで時間がありますので、紛失などに注意をしていただければと思います。
また、加入している生命保険や地震保険について、会社より控除証明書がきちんと届いているかも確認して下さい。引越しなど、住所変更を行った場合に保険会社へ住所変更を忘れていたり、郵便局への転送願を忘れていたりして、控除証明書が所定の時期に届かないかもしれません。
②控除を受けるための新たな加入があるか
年内に新たに生命保険、地震保険、確定拠出年金(いわゆるiDeco)などの加入を行った場合は、きちんと控除証明書が届いているか確認をして下さい。新たに加入した保険などに関しては、通常のものより発送が遅くなる可能性があります。
年末調整に関しては、会社で提出期限を設けているところが多いと思いますので、期限までに控除証明書が届かないために会社に提出が間に合わず、控除を年末調整で受けられなかった場合は、後で届いた分は確定申告を行うことにより、所得控除を受けることになります。
新たに契約をした地震保険などの場合では、加入時に送られてくる保険証書と一緒に控除証明書がついている場合がありますので、ご確認下さい。
③配偶者控除などでの合計所得金額には注意する
年の途中で配偶者や扶養親族に変更がある場合には、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなったり、新たに控除の対象になったりする場合があるので、配偶者や扶養親族に確認を行って下さい。
特に、配偶者や扶養親族のパートやアルバイト先の給与が控除の対象となる金額を超えてしまった場合は、年末調整時に会社の年末調整を行う担当者に届け出て、年末調整で控除対象外となるように調整をしてもらって下さい。
年末調整時までに配偶者や扶養親族のパートやアルバイトの給与が確定しないで、配偶者控除や扶養控除を受けてしまい、後で配偶者控除や扶養控除が受けられないと分かったときは、確定申告を行うことにより是正を行って下さい。
配偶者や扶養親族のパートやアルバイトにより所得が越え、年末調整では配偶者控除や扶養控除を受けてしまい、さらには確定申告で是正を行わなかったときは、勤務先に配偶者控除や扶養控除の確認が所轄の税務署より届きます。
こちらにより配偶者控除や扶養控除の是正が行われますが、会社が是正を行った金額に応じて追加で加算税や延滞税を負担することになります。
勤務先に迷惑をかけないように、年末調整時や確定申告を行うことで注意しましょう。
④家族状況が変化していないか
給与所得の収入金額が850万円を超える者で、新たに扶養親族が誕生した場合などは、所得金額調整控除が使用できます。
また、扶養している親が認知症などになり、被成年後見人になった場合に障害者控除の対象になったり、離婚によりひとり親になった場合で、一定の要件に該当するときは、ひとり親控除を受けられます。
状況の変化に注意していただき、年末調整の書類を提出するときに記載漏れがないようにして下さい。