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実査とは? 監査との違い、流れと実施における注意点を押さえよう

実査とは? 監査との違い、流れと実施における注意点を押さえよう

実査は、財務諸表が適正であるかを監査法人や公認会計士が確かめる「監査」で行われる手続の一つです。

資産の実在性や、帳簿との整合性を確かめるために実施されるもので、企業の担当者は実査の際に必要な書類を提出するなど、実査がスムーズに進むよう協力することが求められます。

この記事では、実査の概要や流れ、対象物、実施における注意点などを解説します。実査について理解を深め、準備を整えておきましょう。


この記事の監修者
もりやま会計事務所  公認会計士・税理士 

実査とは

実査とは、現金や受取手形、有価証券などの資産が帳簿通りに存在していることを確かめるために、公認会計士が企業に出向いて実際に目で見て確認する監査手続のことです。正確には「実物検査、実物調査」といいます。

実査は決算日を基準に行われますが、決算日後すぐの時期に実施されるケースが多く、企業の財務状況の正確性を確認するための重要な手段となります。

企業の資産には、現金や受取手形、有価証券のように目に見えるものと、売掛金や預金など、目に見えないものがあります。現金や受取手形、有価証券などの目に見える資産は金庫などに保管されているケースが多いため、現場で直接確認する方法が最も効率がよく、確実であるため、実査が実施されることがあります。

監査における実査の位置づけ

監査とは、企業の財務諸表が会計基準等に準拠して適正に表示されているかどうかを、監査法人や公認会計士が確かめることです。

現物の資産を確認する「実査」は、監査手続の一環として行われます。

実査は期末日の貸借対照表の残高を確かめるために実施されます。実査の結果、実査の対象物の金額が帳簿の残高と整合しない場合、貸借対照表の修正が必要となる可能性があります。

数ある監査手続の中でも、実査は期末日の直後に行われ、公認会計士が直接現物を確かめるという特徴があります。

実査の目的

前述の通り、監査は企業の財務諸表が会計基準等に準拠して、適正に表示されているかを確かめるために行われます。

そして、監査手続としての実査は、企業の期末日の貸借対照表の残高を確かめることを目的としています。

財務諸表の意図的な改ざんや、経営状態を把握するために必要な情報を隠ぺいする不正会計は、企業の信用を大きく傷つけることになります。

財務諸表の改ざんや隠ぺいする意図がなくとも、本来資産として計上すべきものが正しく計上されていないケースもあります。実査では、そのような帳簿外の資産に関する事実を把握する目的もあります。

また、機材や設備といった固定資産は遊休状態となっていたり、経年劣化によって破棄されていたりするなど、状況が変わっている可能性もあります。

帳簿に記載されている固定資産の状況に変化がないかどうかも、実査で確認が行われることがあります。


実査の内容・スケジュール

ここでは、実査の時期や対象物、具体的な流れを解説します。

実施時期

実査は原則として、期末日の直後に実施します。

貸借対照表(バランスシート)の項目が監査の対象となるため、期末日の残高が確定している状態で実施するのが望ましいからです。

ただし、期末日から数日後に実査を実施し、期末日の実際残高まで遡って検証することもあります。

対象物

実査の対象物として、次のようなものがあげられます。

  • 現金
  • 預金通帳・証書
  • 株券などの有価証券
  • 受取手形
  • 切手
  • 収入印紙
  • 有形固定資産
  • ゴルフ会員権

一般的に、有形で価値のあるものについて実査が行われます。

流れ

実査の流れは次のようになります。

  1. 実査対象の選定
  2. 実査対象と試算表・内訳表などの提出
  3. 補助資料の提出
  4. 受領証の記入

1.実査対象の選定

実査日前に会計士から実査の対象資産や、対象拠点について聞いておきます。

その際、会計士が実査対象を選定するために、期末日前の一定の日の試算表などの提出を求められることがあります。

2.実査対象と試算表・内訳表などの提出

実査日に会計士が到着したら、実査対象物と期末日の試算表、実査対象の内訳表などを提出します。

代表的な実査対象物には次のようなものがあります。

  1. 現金
  2. 普通預金(預金通帳)
  3. 定期預金(預金証書)
  4. 受取手形
  5. 切手・収入印紙

なお、会計士が実査をしている間は、紛失などのトラブルを回避するため、経理担当者がその場に立ち合う必要があります。

3.補助資料の提出

期末日後から実査までの間に現金を使用した場合などは、帳簿残高と実際残高がズレてしまいます。

このような場合、会計士からそのズレを証明することができる現金出納帳や、領収書などの証憑の提出が求められるため、事前に準備して手順2の資料に追加して提出します。

4.受領証の記入

実査が無事終了すると、会計士から「実査対象物を返却しました」との旨が記載された受領証の記入が求められるため署名を行い、場合によっては捺印もします。

実査に立ち会う経理担当者は、署名用のペンと自分の印鑑を事前に用意し、実査終了まで席を外す必要がないようにしておきましょう。


実査における企業の注意点

実査がスムーズに進むよう、企業側は次のような点に注意しましょう。

帳簿残高のチェック

会計士による実査が行われる前に、経理部においても帳簿残高と実際残高が整合しているかどうか、確かめておきます。

帳簿残高と実際残高がズレている場合は、その原因を確かめたうえで帳簿残高を修正するか、会計士による実査時にズレの原因を説明・証明できるように準備しておかなければなりません。

実査の周知

実査がスムーズに進むよう、経理部内で実査対象や日時について周知しておくことも重要です。

実査では、原則として対象物が同時に検査されます。会計士による実査時に、一部の預金通帳だけ記帳のために持ち出されていると、実査ができないなどの事態が発生することがあります。

また、その日に使う切手・収入印紙が担当者の手元に保管されているために、帳簿残高と実際残高が合わなくなることも考えられます。


実査についてのまとめ

実査は監査を受ける会社にとって、正確な財務諸表を作成するために重要なイベントですが、日頃から会社の資産を正しく把握できる業務を構築することが何よりも重要です。

例えば、現金の残高は正しいか、固定資産の状況に変化はないかなど、定期的にチェックすることを心がけましょう。


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監修者プロフィール

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守山 幸史朗

もりやま会計事務所 公認会計士・税理士

2013年に公認会計士試験合格後、事業会社及び監査法人勤務を経て、2022年にもりやま会計事務所を開業する。

現在は主に関西地方の中小企業をメインに税務顧問のサービスを提供している。ITを積極的に取り入れ、顧客のビジネスのIT化・DX推進を得意としている。

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